海外売上高比率2割をイメージ
──日立製作所グループ全体の方針は、日立本来の強みである社会インフラ分野への注力ですよね。そうなると、グループの中核SIerとなる日立ソリューションズも、こうした分野に対して、より力を入れることになるのでしょうか。
諸島 既存顧客に加えて、日立製作所グループと一体となった社会インフラ分野のビジネスも伸ばしていくことに異論はありません。
──日立製作所の社会インフラ事業は、国内だけにとどまりません。これまでドメスティックなビジネスが多かった日立ソフト、日立システムのグローバル化が求められるのではないでしょうか。
諸島 日立製作所がいうところの社会インフラの主眼は、成熟市場である国内ではなく、やはり海外にあります。発電所や新幹線、スマートグリッドなどを米国やアジアに売り込もうというものです。もちろん、これまでにも日立がつくってきた社会インフラ系の商材は、数多くの国や地域に購入してもらった実績があります。とはいえ、日立グループのSIerも、日立製作所と歩調を合わせて海外でこうした社会インフラ系のシステム構築が十分にできていたかといえば、残念ながらそうではない。新体制では、日立製作所と一体となって、国内外での社会インフラ系システム構築を担う心構えでいます。
──主力SIerである御社が担っていないとなると、誰が海外でシステムを構築してきたのでしょうか。日立製作所はプロダクトを箱売りしていた、と。
諸島 “箱売りしていた”といわれても、仕方ありませんね。海外での売上高比率がグループSIerのなかで比較的高いとされていた当社ですら、実数で40億円程度。日立製作所のプロダクトを情報システムでインテグレーションするビジネスを十分にフォローできていなかったのは事実です。
しかし、これからは違います。社会インフラ系でいわれるスマートグリッド、スマートシティなどは、ITを活用したインテリジェンスな電力網、省エネ型の都市構造を示した概念です。こうしたスマート系ビジネスには、発電所や送電網、交通、医療分野などの個々のプロダクトをITで有機的に結びつけるアプローチが欠かせません。プロダクトを売って終わり…という代物でなく、ITをフルに活用し、中長期的にコントロールする技術が大切になってくるのです。
──NTTデータやITホールディングス(ITHD)など大手SIerは、果敢に海外へ進出しています。御社では海外でどれくらいの売上高を見込んでいますか。
諸島 社会インフラに密接に関連するスマート系のビジネスをメインに位置づけていることから、ライバル他社とは切り口が多少異なります。当面の日立ソリューションズの目標は、2012年度連結売上高で3500億円以上を目指し、うち海外売上高比率は10%程度のイメージです。
──ITHDグループのTISが、中国天津市で日系SIerとして初めて高機能データセンター(DC)を新設しました。私も現場を取材したのですが、このDCの中で日立の運用管理システム「JP1」が稼働し、かつ開業を記念した寄せ書きに諸島社長の名前も見ました。
諸島 普段はライバルではありますが、海外で組めるところは、しっかり組んでいるということです。中国では、日立ソフトと日立システムを合わせておよそ100人の体制で臨んでいます。現地における経済成長のスピードやボリューム感を考えると、まだまだパワーが足りませんが…。
──日立製作所だけでなく、日系有力SIerとも巧みに連携してビジネスを拡大させるという印象を受けます。こうした取り組みを踏まえて、中長期の業績目標はどんなレベルでしょうか。
諸島 将来的に年商5000億円、海外売上高比率20%を目標に掲げるつもりです。日立ソリューションズの社員数は、およそ1万人。実際に海外で勤務するかどうかは別として、国内の経営リソースも2割程度は海外ビジネスに振り向ける必要がありそうです。当社も、当社のビジネスモデルも、そして情報サービス業界も大きく変わる節目に差し掛かっているのです。
眼光紙背 ~取材を終えて~
平時の社長ではない――。諸島伸治社長は、自らをこう表現する。日立ソフト社長としての期間は、わずか6か月。その後、同社の名は消えることが決まっている。折しも、日立ソフト創業40周年の年、“最期の社長”としての重責を果たす。
「市場環境がダイナミックに変わり、それに合わせて会社組織も変わる。こういうときこそ、理念を忘れてはならない」と、社員全員に熱っぽく語りかける。理念とは“社会に貢献する”こと。企業存続の社会的意義だ。これを見失うと、「荒波に揉まれるなかで、自分が何をやっているか見失ってしまう」。
「昨日までの仕事にいつまでもこだわらず、あした、顧客や社会に役立つ仕事をする。そう考える人と、そうでない人では、自ずと行動が異なる」。新会社日立ソリューションズでは、世界を舞台にビジネスを伸ばす。“終わりの始まり”の端境期、複雑な心境が交錯する。(寶)
プロフィール
諸島 伸治
(もろしま しんじ)1948年、兵庫県生まれ。71年、関西学院大学理学部卒業。同年、日立製作所入社。01年、システムソリューショングループ金融システム事業部長。03年、理事、情報・通信グループCOO。04年、日立ソフトウェアエンジニアリング執行役常務。07年、執行役専務。10年4月1日、代表取締役社長に就任。
会社紹介
日立ソフトウェアエンジニアリングは、今年に入って日立製作所の完全子会社になった。2009年3月期、株式上場時の連結売上高は1658億円。今年10月1日付で合併が決まっている日立システムアンドサービスとの単純合算ベースの年商は3000億円規模となる。両社が合併して誕生する新会社日立ソリューションズは、一躍、SIerトップグループ入りする見込みだ。2012年度には年商3500億円への成長を想定し、グローバル展開などによって将来的には同5000億円規模へと拡大させる意欲を示す。