社長直轄部隊で「提案型営業」を推進
──提案型営業に切り替えていくなかで、いま必要と感じておられること、強化しておられることは?
下村 「機能」としては、実は揃っています。社員個々の専門的な技術は高いのですが、それらをまとめていく「ゼネラリスト」が不足している。プロジェクトマネージャーを育成することを喫緊の課題と捉えています。
一方で、製品についてはこの10月に米国から新しい商材をもってきました。米サイバーアークソフトウェア社の特権ID管理製品「PIM Enterprise Suite」がそれです。クラウドの時代ですから、社内のシステムがプライベートクラウドに移行し、またパブリッククラクドと連携させるハイブリットクラウドへの発展しています。データセンターを利用するわけですから、社内にいるIT管理者がシステムを管理するのではなく、データセンターという第三者が社内システムの特権IDを保有し、管理する状況になるのです。統合的な特権IDの管理やロギングはセキュリティの面で非常に大事です。企業では誰が何をするか想定できない状況なので、コンサルティングから入って、必要性を訴求しながら、サーバーやネットワーク機器、アプリケーションをすべて統合管理できる製品「PIM Enterprise Suite」を提案していきます。「PIM」を導入すれば、特権IDの管理が容易になりますから、セキュリティを高めつつ、利便性も確保する、バランスのとれた製品として提案していきたいですね。
──提案営業を推進するにあたって、社内組織体制は変更されましたか。
下村 「PIM」については、すべての企業に提案できる製品ですから、社長直轄のプロジェクトを立ち上げて、とくにこれから力を入れていきます。今、無線LANを含むLANイントラネット関連のユニット、マカフィーのゲートウェイ製品などを販売するセキュリティマーケットビジネスユニット、そしてインテグレーションの部隊がありますが、そのなかからそれぞれ人を参加させて、営業については横断的な体制を敷いています。当社は官公庁や大企業を中心にビジネスを行っています。ニッチマーケットであり、サーバーが何十台もある環境でないと、この製品を入れても意味がありませんから、主要マーケットは大企業に限られるでしょう。
──もともと大企業分野に強みをもっていらっしゃるわけですね。
下村 そうではなく、10年かかって業容を変えてきました。当社は設立して25年がたちますが、15~18年くらいマッキントッシュ関連のネットワーク機器やソフトを販売していました。主要マーケットは中堅企業以下とコンシューマが中心だったのですが、マッキントッシュはエンタープライズビジネスからは撤退していますから、そこからビジネスシフトが始まったわけです。
──大企業に主要マーケットをシフトするという計画は、すでに完了していますか。
下村 顧客基盤でいえば完成しているといえますが、当社のビジネスとしてはまだ途上にあります。今、7割が間接販売です。2008年に策定した中期目標では5か年(2012年12月期)で直販を50%以上にもっていくことを目指しています。あと2年…ちょっと難しいかな(笑)。最終的にはエンドユーザーの顔がわかる位置でビジネスをしたいと考えています。
・こだわりの鞄 手前にある「TUMI」の鞄。後ろの鞄は前に使っていたものでかれこれ20年前の代物。「ノートPCが大きかったので大きな鞄を使っていたが、ノートPCのサイズダウンに合わせて買い替えた」のが今の鞄。もう8年使っている。iPadを買ったので鞄を買い替えたいが、「壊れてくれない」とのこと。
眼光紙背 ~取材を終えて~
インタビューを始める前、「実は、この企画のことをよく知らないままで、取材を引き受けてしまった。とても無謀なことをしました」と、率直な感想が下村社長の口から飛び出した。その割に、質問にはきさくに答えてもらうことができた。
モノ持ちがいい下村社長。20年モノの鞄に加え、今使っている鞄もきれいなままで8年間使い続けている。写真撮影はオフィス近くの木場公園。「スカイツリーがきれいに見えるスポットがある」と案内していただいた時のクルマが、17年ほど乗っているという日産セドリック。走行距離は26万キロ、ざっと地球6周半である。自宅の近所で、休日によく来るという木場公園。トランクの中にはバドミントンのラケットが入っていた。また、マッキントッシュとの出会いなど、おもしろいエピソードも聞かせていただいた。初対面ながら、その人柄に一気に惹きつけられてしまった楽しい取材だった。(環)
プロフィール
下村 正洋
(しもむら まさひろ)1951年、大阪府生まれ。74年、大阪電気通信大学卒業。同年、デジタルコンピュータに入社し、銀行オンラインシステムの構築、UNIX-WSの開発に従事。88年、ディアイティに入社し、取締役副社長に就任。95年、代表取締役社長。対外活動にも力を入れており、現在日本ネットワークセキュリティ協会理事/事務局長、日本セキュリティ監査協会事務担当理事、セキュリティ対策推進協議会代表を兼任。
会社紹介
1985年、ダイデンインテリジェンステクノロジーとして設立。87年、ダイデンインテリジェンステクノロジーをディアイティに改称。現在はネットワーク製品販売および構築ネットワークインテグレーション、研究開発型受託事業、セキュリティ関連規格のコンサルティング、セキュリティ監視、フォレンジックを提供するセキュリティサービス事業を提供している。2010年12月期の売上高は25億円の見通し。