徹底的な現地化を進め、中国市場で高い支持を獲得しているキヤノン中国。業容はこの5年でほぼ5倍にまで拡大した。その立て役者が小澤秀樹社長だ。同社の成長は「小澤さんのキャラクターがあってこそ」と周囲の誰もが口をそろえる。リーマン・ショック以来の中国経済の急速な回復を追い風に、あと7年の間にさらに売り上げを5倍増に引き上げ、1兆円企業を目指すという。めまぐるしく変化する中国市場で、大きく成長しながら勝ち残るためには何が必要なのか? 秘訣を聞いた。
20%程度の伸び率では不満
──社長に就任されて5年になりますが、その間に売り上げ規模はどの程度拡大しましたか。
小澤 2005年4月10日、反日騒動の只中で社長に就任しました。大変な緊張感を抱いてのスタートでしたが、業績は順調。毎年30%程度の伸びを続け、売り上げはこの5年で4~5倍までになりました。2010年は2300億~2400億円で、おそらく40%程度の伸びになると思います。当初は25%くらいだろうと考えていたのですが、中国経済の回復のスピードの速さという追い風もあって、いい結果を残すことができそうです。
リーマン・ショックの頃はさすがに中国経済も縮小しましたが、2009年でも20%を超えることができました。とはいえ、それまで非常に高い成長率を維持していたわけですから、20%程度の伸び率ではまったく満足できませんでしたが…。
──かなり速いスピードで経済が回復してきている中国ですが、今後どのような成長戦略をお考えですか。
小澤 2017年までには100億米ドル、日本円で1兆円規模にしていく計画です。あと7年ありますが、できればこれを前倒しで達成していこうと考えています。そのためには、拠点も増やす必要があります。現在、約1000社の取引先を16支社と三つのサテライトオフィスで抱えています。広大な国土に散らばる13億人にこの1000社で売り込んでいるわけです。しかし、顧客の近くにいてきちんとコミュニケーションをとって売り上げを拡大していくにはまだまだ拠点が足りません。あと10か所程度増やし、全部で30か所ぐらいにしていくつもりです。
それから、中国ではデジタルカメラこそコンパクト、一眼ともトップシェアが取れていますが、例えば複写機はいまひとつです。原因ははっきりしています。実は、市場の80%が(分速)20枚以下のローエンド製品なんです。得意な高速でハイエンドの製品ではシェアが取れません。中国では売れるローエンドマシンが必要です。
キヤノン全体に占めるアジアの売り上げはすでに20%を超えました。すでにアジア・中国強化の戦略に切り替えて動き始めています。その一環としてローエンドの複写機でも勝負できる状況を整えつつあります。アジアで勝っていける戦略は非常に重要です。その中心に中国があります。
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