若い力を積極的に取り入れる
──新分野を具体的に教えてください。
小野寺 大きく分けて三つです。まず営業地域の拡大です。ベル・データは全国に約2500社のユーザーを抱えていますが、もっと広範に多くのユーザー企業にアプローチする必要があると考えました。ですので、拠点を増やし、今では東京本社のほか、大阪、名古屋、九州に支店を構えています。まず全国にアプローチしやすい環境を整えました。
次が商品の拡充。われわれが目指しているのはワンストップサービスです。ユーザー企業の望むITソリューションを総合的に提供する企業をつくろうとしています。「AS/400」を中心に、日本IBMの製品には精通しています。ただ、当然ながら、ユーザー企業のすべてが日本IBM製品だけを求めているわけではありません。だから、ユーザーに魅力的なソリューションを提供するための製品の取扱いを増やしています。
──ワンストップを標榜するうえで、データセンターをもっていることも強みですよね。
小野寺 データセンターは東京に2か所、大阪に1か所あります。確かに今、データセンターを活用したアウトソーシングサービスが非常に伸びています。東日本大震災の影響で、情報システムを自社で保有・運用せずに、専門業者であるIT企業に預けようとする動きが強まっています。私どもの社内では、このアウトソーシングサービス商戦は2~3か月が勝負と、ハッパをかけているところです。
そして、三つ目が間接販売事業の強化です。ユーザー企業に直接販売するのではなく、IT企業に販売し、その企業がユーザー企業に提供するチャネルビジネスをもっと拡大するつもりです。
──チャネルビジネスの成果を教えてください。
小野寺 一例として、昨夏から本格的に販売を始めたスケールアウト型ストレージ「SCALE」があります。すでにパートナー企業が10社以上揃っていて、間接販売体制が整ってきました。また、今後は保守・運用などのサービスの卸売りも手がけたいと思っています。自前のCEと豊富なテクニカルセンターをもち、24時間365日のサービス提供体制を備えている点は当社の強みです。IT企業のなかには、保守・運用サービスの需要があるものの、そのノウハウと体制がなくてお断りしている場合があると思います。そうした場合、当社に相談してもらって、保守・運用サービスの部分は当社が請け負うようなこともできると思っています。
間接販売のビジネスボリュームは、現在10%程度ですが、これを将来的には30%まで引き上げたいと思っています。
──従業員数はどの程度の規模になりますか?
小野寺 年商100億円に到達した時点では約300人規模になっているかと思います。IT企業は何といっても、人が最大の財産。新卒採用も続けながら、若い力を積極的に取り入れ、人を育てて着実に目標に向けて進んでいきたいと思います。
・こだわりの鞄 昨年秋に購入したビジネスバッグ。ただ、プライベートでもビジネスの場でも「外出する時は、手ぶらがいい」性分。このバッグも、月曜日に出社する時に持ってきて会社に置きっぱなし。金曜日に自宅に持ち帰る。「バッグを持たなくてもそれほど仕事に悪い影響はない」とか。
眼光紙背 ~取材を終えて~
あるIT業界のパーティーで小野寺社長に偶然会ったことがある。雑談しようと思って近づいたら、参加者が入れ替わり立ち代り小野寺社長に話しかける。顔の広さと人柄のよさを、このパーティーで実感した。今回のインタビューでも、氏から受ける印象は変わらなかった。
体調を崩した後でも、職場の部下や日本IBM時代の同僚、取引先との宴席はできるだけ断らないようにしているという。「体を壊した原因はストレス。肝臓は悪くないから大丈夫(笑)」。1週間のうち、夜はすべて宴席で埋まっていることも多いとか。縁を大事にし、人づき合いを大切にしている小野寺社長らしい。気さくな雰囲気とともに、からだ中にエネルギーがみなぎっているような人物というのが第一印象だ。体を壊した人とはとても見えない。縁を大切にするだけでなく、リーダーとしての風格が、多くの人を惹きつけ、幅広い人脈を形成している要素になっているのだろう。(鈎)
プロフィール
小野寺 洋
(おのでら ひろし) 1952年8月生まれ。75年3月、早稲田大学理工学部卒業後、同年4月に日本IBM入社。87年、専務取締役補佐。88年、米IBMに出向して海外の日本企業支援を担当。90年に帰任。99年、ゼネラルビジネスサービス事業部長。00年、ビジネスパートナー事業部長。01年、理事。03年、日本IBMを退職。同年に経営コンサルティングサービスのジュークスを設立して代表取締役に就任。06年、ベル・データに入社し、常務取締役営業本部長に就く。07年4月、代表取締役社長に就任。
会社紹介
ベル・データは、1991年7月の設立で従業員数はおよそ180人。昨年度(2010年9月期)の売上高は約42億円。日本IBM製のオフコン「AS/400」(現・IBM Power Systems)を活用したシステム構築とITサービスに強く、総出荷台数は2200台を超えている。また、2010年には日本IBMからの総仕入金額が10億円を突破した。最近は、日本IBM製品をユーザー企業に直接販売するだけでなく、さまざまなメーカー製品も取り扱い、ITベンダーを通じた間接販売にも力を注いでいる。