SIerに新しいビジネス機会を提供
──クエストは、世界市場ではどのようなブランドイメージをもたれていますか。
大越 例えば「クエスト イコール Toad」です。Toad(Tool for Oracle Application Developers=愛称はヒキガエル)はクエストのフラグシップ製品です。SQL構文を自動生成するデータベース(DB)開発ツールであり、バグ出しやチューンアップなどを機能として提供し、開発工数削減に寄与します。また、できあがったプログラムをシミュレーションして分析レポーティングを行えるなど、運用管理にも役立ちます。売上構成比も高い割合を占めていて、全世界で100万以上のユーザーがこれを利用しています。
オラクルのDB開発者で知らない人はいないほど有名な製品ですが、日本では残念なことに売れていません。なので、例えばの話ですが「クエストといえば、ああToadね」と分かるくらいにしたいですね。
──とくに力を入れていくソリューションは、開発ツールになるということですか。
大越 それ以外にもワールドワイドで売れている製品を数多く保有しています。開発ツールもあるのですが、統合監視ツールをメインとしています。こういった分野のソフトウェアはバックアップのように「どの顧客にとっても事業を継続するうえで確実に必要」というものではありません。もう少しバックヤードに隠れるソフトウェアとして、例えば受発注のアプリケーション、オラクルDB、仮想環境とかActive Directoryなどで、各々のアプリケーションをスムーズに動かしたり、運用監視したりする。
複雑になったシステムの運用を自動化、簡素化して手間を減らすためのツールなのです。顧客に必要性を説明するところから始まりますので足の長い製品だと思っています。その分、金額の大きいビジネスにつながると考えています。今後は製品や対象企業規模によってバックボーンのパートナーモデルと、クエストがもっていた直販、ハイタッチモデルを使い分けて、販路を拡大していきたいと考えています。
──市場に浸透していない分野であれば、パートナー販売のチャネルに乗せるのは容易ではありませんね。
大越 それなりの時間をかければ販売していける体制は整うと、確信しています。とくに今、国内のSIerが扱っている製品は、ほぼ同じです。ワールドワイドで1位から5位くらいまでの製品を見つけて組み合わせて売っているのだと思います。クエストは日本国内でこそ知名度に乏しいですが、ワールドワイドでは実績が高いので、他社と差異化も図れますし、新しい分野として扱うのに面白い製品だと思います。パートナーにも投資が必要とされますから、ビジネスにどう貢献できるかを説明するのがわれわれのミッションです。
──今後のビジネスの目標は?
大越 国内では、旧バックボーンのビジネスは引き続き2ケタ成長を維持したい。旧クエストについては、ゼロスタートに近いので、かなり注力していきます。だいたい2年後には、今のバックボーンと同等のビジネス規模にはもっていきたいですが、ポテンシャルは、たくさんの商材がある分、クエストのほうが大きいです。
・こだわりの鞄 TUMI(トゥミ)の鞄。4年くらい前にサンディエゴで見つけ、日本より少し安かったので購入した。「海外出張に行くときにキャリーバッグの上に装着できる。機内持ち込みができるので、パッケージロストを心配したり、空港で出てくる荷物を待たなくていいので便利」とのこと。
眼光紙背 ~取材を終えて~
国内バックアップソフトウェアの雄であるバックボーン・ソフトウエア。今回の買収は、世界では50番目のISVだが、国内で伸び悩むクエスト・ソフトウェアと、外資ながら国内で高いシェアをもつものの世界的には存在感を示しきれていなかったバックボーンの、まさに「win-win」の買収統合だ。
バックボーンの事業は、クエストのデータプロテクション事業に組み込まれる。データプロテクション事業のトップは元シマンテック(ベリタス)で競合製品の販売を推進してきた人物だ。今後はクエストの新たな成長の柱、主力事業の一つとして、データプロテクション事業を伸ばしていく。今後3~5年でクエストのグローバルの売り上げに占める構成比で3~4割ほど伸ばす計画だ。逆に日本では、世界で売れているクエスト製品を伸ばさねばならない。大越社長がバックボーンでつくり上げた盤石な販売基盤を武器として、日本市場のシェアを高める。(環)
プロフィール
大越 大造
(おおこし だいぞう)1969年1月、福島県郡山市生まれ、42歳。91年3月、山形大学工学部電子工学科卒業。同年4月にIT商社のデジタルテクノロジーに入社し、営業部に配属。98年2月、ネットボルト日本法人(現バックボーン・ソフトウエア)の設立に従事。06年5月、シニア・セールスディレクターを経て、日本法人の代表取締役と米本社のバイス・プレジデントに就任した。米クエスト・ソフトウェアとの買収統合に伴い、7月1日付で日本クエスト・ソフトウェア代表取締役社長に就任する。
会社紹介
米クエスト・ソフトウェアは1988年にカリフォルニア州で創業。複雑化するインフラに向けて、管理を簡素化するソリューションを提供している。世界23か国、60拠点を展開。日本法人は2003年に設立された。今年7月1日付でバックボーン・ソフトウエアを統合し「日本クエスト・ソフトウェア」として発足。今回統合されるバックボーン・ソフトウエアの日本法人は1998年に設立。データのバックアップ/リストア、ディザスタリカバリ関連のソフトをOEMパートナーやSIerなどを通じて販売し高いシェアをもっていた。