オープン化・ハードの低価格化が進む状況にあって、サービス単価と保守契約率が下がり、保守・修理サービス会社を取り巻く環境は厳しくなった。クラウドは新たなビジネスチャンスを生む可能性があるものの、既存ビジネスを脅かす存在にもなる。保守サービス会社は、まさに転換期を迎えている。2004年から兼務で富士通エフサスの事業に携わり、今年6月に社長に就任した今井幸隆氏は、厳しい環境であることを認めつつも、表情に曇りはなく、「成長は可能」と増収増益路線を描いている。
ハードの価格下落で縮小する保守事業
――「顧客のコンピュータが壊れたら駆けつけて修理する」という保守・修理サービスは、クラウドが主流になれば、一層厳しい環境になるはずです。富士通エフサスは、全売上高のうち、この保守・修理(メンテナンス)サービスの売り上げが半分弱を占めています。
今井 確かに、メンテナンスサービス事業はここ数年厳しい状況です。メンテナンスのサービス価格は、ハードの価格に比例します。安価なIAサーバーを採用するユーザー企業が増えているので、メンテナンスサービスの価格は自ずと下がる。クラウドシステムでIAサーバーを利用するケースは増えるでしょうから、縮小傾向は今後も続くとみています。
最近は、ハードの価格が下がっているので、メンテナンスサービス契約を結ばなくても「壊れたら新しい製品を購入すればいい」と考えるユーザー企業も増えました。これもメンテナンスサービス事業を厳しくしている要因です。保守サービス事業は、ビジネスボリュームが縮小することを前提に戦略を考えなければなりません。
――となれば、クラウドの普及はチャンスではなく、脅威になる、と?
今井 いや、そうとは限りません。クラウドだから生まれるビジネスチャンスはあります。例えばシステムの運用。クラウドと、そうではないシステムを比べた場合、クラウドのほうが明らかに複雑です。すべてのユーザー企業の情報システム担当者が、最新技術の動向を常に追跡して、クラウドを安定運用し続けるのは難しいでしょう。「運用は、専門のIT事業者に任せたほうがいい」と考えるユーザー企業も増えるはず。そうした時に選ばれる存在になれれば、ビジネスを拡大することができると考えています。
――クラウドを事業に結びつけるために、準備していることは何ですか?
今井 富士通エフサスは、アプリケーションは基本的に開発しませんが、それを動かすための情報システム基盤は、構築から運用、保守まで一気通貫で手がけています。昨年は社内のシステムをプライベートクラウド化して、クラウド構築・運用に必要なことを体感し、ノウハウを蓄積しました。昨年の暮れには、次世代の事業を創造するための専門組織「次世代ビジネス企画推進本部」を設置して、そのなかでクラウド事業の可能性を探っています。
――今の事業セグメントは、「インフラインテグレーション」「運用サービス」「メンテナンス」「プロダクト販売」ですね。現在、メンテナンスが約半分を占めていると思いますが、将来の事業セグメントの比率についてはどうお考えですか?
今井 4事業セグメントが均一に25%ずつを占めるのが望ましいと考えています。そのために今、インフラインテグレーションと運用サービスの事業を拡大するプランを立案・推進しています。
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