ロードバランサー(負荷分散装置)を中心とするネットワーク機器メーカーのF5ネットワークスジャパン。このたび、そのトップが交代した。新社長のアリイ・ヒロシ氏は、身長が高く、堂々たる体躯の持ち主だ。「新規市場を開拓して、この2、3年でF5の事業をアグレッシブに拡大していく」と意気込みを示す。アリイ社長に、F5ネットワークスジャパンの事業戦略を聞いた。
年内に従業員100人体制へ
――7月1日付でF5ネットワークスジャパンの社長に就任されました。これまでのおよそ2か月で、社員や販売パートナーとのコミュニケーションを通じて、御社が抱えている課題などを把握できましたか。
アリイ まず、日本のIT市場において、「クラウド」「仮想化」「セキュリティ」「BCP(事業継続プラン)」の四つが、ビジネスとして拡大していく可能性が大きい分野になるとみています。F5は、これらの市場分野に対して、非常にすぐれた製品ポートフォリオをもっていると自負しています。課題は、当社の製品の優秀性をどうやって販売パートナーに理解していただくかという点です。より多くの販売店に、F5の製品をコア商材として取り扱っていただくために、販売店のサポートやトレーニングを強化しなければなりません。積極的なパートナー支援によって、販売店に対して当社の評価を高めていきたい。
――F5ネットワークスは世界で売り上げを拡大しているようですね。2011年の第2四半期(4~6月)のグローバルの売上高は、約2億9000万ドルに及んだとか。F5の全売上高への日本法人の貢献度はどのくらいでしょうか。
アリイ 地域別の売上高は公開していないので、具体的な数字は明らかにできません。しかし、日本法人は、F5の売上規模のトップ5の市場に入っているのは確実です。今年度の第1四半期と第2四半期の日本での成長率は、グローバルのそれと同じ水準で伸びています。ロードバランサーのマーケットシェアで、当社はグローバルでは45%、日本では44%といずれも首位を獲得しています。要するに、日本はわれわれにとって、グローバルのなかでもとても重要な市場だということです。
当社は日本市場のポテンシャルに注目して、日本での事業拡大に取り組んでいる最中です。その一環として、このところ、社員の中途採用に力を入れています。市場を広げて、事業を伸ばすために、各業種に特化した知識やノウハウをもつ人材が欠かせないとみているからです。今年8月にも、数人の新人が入社してきました。6月時点で85人だった従業員数を、年内に100人にまで増やしたいと考えています。
――冒頭、BCPが成長を見込める分野の一つとおっしゃいました。東日本大震災の影響を受けて、データセンター(DC)の需要が増大したことが背景にあると思います。
アリイ ユーザー企業がDCの強化や分散を推進しているという動きに、われわれは確実な手応えを感じています。ここ数か月で、DC関連の案件が期待以上に増えているのです。当社は、DC間でトラフィックを分散し、DCの二分化に最適な商材をもっているので、とくにDCの分散化は当社ビジネスへの影響が大きい。
――ITベンダーから「震災後、BCP製品に関する問い合わせが急増したものの、受注につながった案件はまだ少ない」とよく聞きます。御社では、売り上げにも手応えを感じているという理解でよろしいですか。
アリイ 当社には、速いスピードで動いて、BCP対策を実現しているお客様がいますから、BCPの需要拡大は、われわれの売り上げに直接反映しています。
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