東日本大震災や急激な円高、競争の激化などで厳しさを増す国内IT市場。ハードウェアの販売が主力の東芝情報機器にとっては、単価ダウンが懸念材料となっている。そのような状況にあって、影山岳志社長は、ハードウェアとソリューションの両輪で売り上げを伸ばしていくという方針を打ち出した。当面の目標として、年商1000億円の達成を掲げる。
地域性に適合した商品開発が強み
――6月1日付で東芝情報機器(TIE)の社長に就任されてから3か月が経過しました。東芝から移ってこられて、TIEにはどのような印象を抱きましたか。
影山 これまでに合計で5年半、東芝からTIEに出向していた経験があるんですよ。一度目が1984年のTIEの発足と同時期で、1990年代に入ってからもう一回出向する機会があって……。当時は、ワープロ(ワードプロセッサ)の全盛期で、ワープロの販売促進と営業に携わりました。
およそ20年ぶりのTIEですが、出向していた頃に仕事を共にしていた仲間がまだ社内にいるので、すんなり溶け込むことができました。会社の中身は、確かにずいぶん変わってきていると思います。とはいっても、もともと営業が主体の会社ですから、営業畑出身の私にとっては仕事がしやすい。
――2010年は、「Windows 7」がPCの購入を促進する要因の一つとなりました。最近の状況をみると、ユーザーの購買動向は変化しているのでしょうか。
影山 3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生以降、省電力のニーズを受けてデスクトップからノートへの流れを肌で感じています。
タブレット端末への注目も高まっています。企業からの「導入する前の検証機用に貸してほしい」という要望や利用方法に関する問い合わせがとても増えています。
――PCは、低価格化とコモディティ化が進み、メーカー間の差異化が難しい状況にあります。その点については……。
影山 当社の製品は、お客様からそれなりに評価をいただいていると認識しています。他の国産PCメーカーとの違いを挙げるとすれば、ワールドワイドで事業展開しているという点があるでしょう。PCビジネスは規模がものをいう面がありますから、グローバルでの調達力が強みとなっています。地域性に合った商品を開発して、その地域で販売していくという方針も一つの特徴となっています。国内は、品質や使い勝手でお客様の眼が厳しいですが、細かなマーケティングを展開しながら商品開発を行っています。
つまり、調達力と地域性を考慮した細かなマーケティングに基づく商品づくりが当社の強みであり、今のシェアに結びついていると考えています。
――ハードウェアの販売を、どうやって伸ばしますか。
影山 東芝は、4月1日付で映像事業とパソコン事業を統合して、デジタルプロダクツ&サービス社を新設しました。これによって、液晶テレビやPC、スレートの販売をさらに伸ばす統合効果が期待できます。映像機器は、デジタルサイネージなどでかなりの需要があると感じています。
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