「今期、いよいよ中国事業が立ち上がる」──。インターネットサービス事業者(ISP)向けのインフラ提供などをビジネスとするフリービットは、長期的な成長を目指して、中国での事業展開に全力で取り組んでいる。「将来、本社を中国に移設する」と、社員に熱いメッセージを送り続ける石田宏樹社長。同氏に、中国事業の進捗状況をうかがった。
IPv6サービスに圧倒的ニーズ
――石田社長は、月の三分の一を中国出張に費やされるそうですね。
石田 フリービットは今、中国でのビジネス展開に向けて、組織をつくっている最中です。私は毎月、時間を惜しまずに中国に出張して、現地パートナーと商談をしたり、商品開発の進捗状況を確認したりしています。われわれはすでに7年ほど前からライセンスを取得するなど、中国事業の基盤づくりを推し進めてきました。今期(2012年4月期)はいよいよ、中国で展開する商材が揃い、中国ビジネスが立ち上がってくる。フリービットの中国事業は今、本格スタートの時期を迎えています。
――中国での組織づくりとは?
石田 まず、中国の首都・北京に当社の現地法人、「フリービット北京」を置いています。現地法人には、IPv6ソリューションなどを展開する通信サービス事業社「BII(北京天地互連信息技術)」との合弁会社である「FBII」と、大手のコンシューマ向けデジタル機器メーカー「aigo(愛国者)」との合弁会社「SmartCloud」の2社が直属しています。
FBII社は、今年5月に大手ブロードバンドサービスプロバイダのチャイナ・テレコム無錫支社と提携して、「スマートシティ」化が急進している江蘇省無錫市で、M2M(Machine to Machine)の通信インフラ構築を担当しています。一方、SmartCloud社は、携帯端末などデジタル製品や家電に採用されるM2Mソフトウェアの開発に携わっており、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズAB社がSmartCloudのM2Mソフトウェアを採用するなど、こちらも着実に事業化が進んでいるところです。現地法人と合弁会社2社を合わせれば、中国でおよそ80人の従業員を有しており、3社の間の連携を強くして単独1社のように動いています。
――従業員の方々はどのような人材でしょうか。
石田 中国現地採用の者が大半で、現地法人/合弁会社の中心的人材になっています。ただし、今のところ、重役には3社とも、日本の本社から派遣した人物が就いています。現地のリーダーを早期に育てて、重役のポストにも中国人を配置していきたい。
――中国ではどのような企業をターゲットとしていますか。
石田 FBII社は主に通信事業者を、SmartCloud社は機器メーカーをターゲットに据え、ビジネス展開をしています。中国は、インターネットの急速な普及によって、IPアドレスが大幅に不足している状況にあります。通信事業者と機器メーカーは、M2Mに基づくユビキタス社会を実現する事業活動にあたって、大量のIPアドレスを必要としており、設備を入れ替えずにIPv6への移行ができるサービスに関して圧倒的なニーズを抱えています。フリービットは特許をもつ技術を活用したIPv6移行サービスを提供することによって、彼らのニーズに対応し、巨大市場の開拓を目指しています。
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