クラウドサービスベンダーのGMOクラウドは、ASEAN地域への進出に本腰を入れる。すでに米国でのクラウドサービスを始めており、アジア成長市場へもサービス範囲を広げることで、さらに幅広い顧客ニーズを取り込んでいく構えだ。グローバル展開では、すでに同社の電子認証サービスが先行しており、「クラウドやホスティング、スピード翻訳など当社の主要事業も、電子認証サービス同様のグローバル化を推し進める」(青山満社長)という方針を示す。クラウドでは世界の強豪ベンダーとシェア争いを展開することになるが、この競争に勝ち残ることでビジネスの拡大につなげていく。
米国に続きASEAN成長市場を取り込む
──国内のホスティング系クラウドサービスベンダーのなかで、いち早く海外へ進出していますが、現時点でどれくらいの手応えを感じておられますか。
青山 クラウドや既存のホスティングサービスすべて含めて、第1四半期(2012年1~3月期)から堅調に推移しています。ただ、米国でクラウドサービスを始めたのが2011年6月からとまだ日が浅く、一部のクラウド関連システムの開発に時間がかかったことから、クラウドサービスが国内外で伸びるのはこれからが本番と捉えています。
──アジア市場への進出はどうでしょうか。
青山 今年夏をめどにASEAN地域でクラウドサービスを始める準備を進めています。当社グループが手がける電子認証サービスの「GlobalSign(グローバルサイン)」を中心とするセキュリティサービス事業では、すでに海外売上高比率が6~7割に達する勢いで推移しています。グローバル展開という意味では、ホスティング/クラウドサービス事業よりも先に進んでいて、アジア市場でもシンガポールやフィリピンなどのASEAN地域に加え、中国やインドのオフィスが稼働しています。
同じグループなので、グローバルビジネスで先行するセキュリティ事業の拠点やリソースをうまく活用しながら、ホスティング/クラウドサービス事業の海外展開も加速していきたい。アジア最大市場の中国にはセキュリティ事業では進出していますが、クラウド系では規制もまだ多いので、検討中です。アジアの市場ということでいえば、ASEAN地域を先に立ち上げる段取りで進めています。
──グローバル市場で勝負を賭けるとなると、グローバル大手ITベンダーやAmazon Web Services(AWS)といったパブリッククラウドサービスベンダーと競い合うことになります。
青山 もちろんそうなりますが、対策はあります。一つには、IBMや富士通など大手ITベンダーに対抗するためには価格優位性を前面に打ち出すこと。一方、AWSに対しては、彼らが手がけていないプライベートクラウドサービスを含む包括的なサービス体系を打ち出すことで競争に勝ち残るつもりです。
具体的には、パブリッククラウドサービスの「GMOクラウド Public」では、従来比約4倍の高いパフォーマンスを実証しています。単純化していえば、同じ価格でも4倍のパフォーマンスを得られる。ベンチマークテストはさまざまな方法があるので一概にはいえませんが、コストパフォーマンスを重視していることは確かです。また、プライベートクラウドサービスの「IQcloud」では、ホスティングやハウジング、客先設置(オンプレミス)などとの連携や、SaaS型アプリケーションサービスやDaaS型デスクトップサービスといった幅広いサービスに対応しています。
つまり、「GMOクラウド Public」のコストパフォーマンスと、「IQcloud」のハイブリッド型サービス、当社が長年にわたって手がけてきたホスティングやハウジングのサービスを組み合わせることで、海外で競争力のあるサービスに仕上げていく構えです。
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