クラウドはパートナーと二人三脚で
──ホスティング/クラウドサービスやセキュリティ事業のほかに、ソリューションサービス事業も手がけておられますが、こちらのグローバル展開はいかがでしょう。
青山 ソリューションサービス事業は、スマートデバイス向けを含むウェブ制作とスピード翻訳などをメインとしています。他の2事業に比べて、グローバル化はまだ緒に就いたばかりですが、少なくともネットを活用したスピード翻訳は海外での事業化に手応えを感じています。今は国内を中心に1万4000人を超える個人や法人、大学のユーザーに活用していただいており、日本最大級のオンライン翻訳サービスに成長しています。
ただ、日本の翻訳市場の規模は年間約2000億円とほぼ横ばいで伸びしろが限られている一方、世界の翻訳市場をみると2008年が142.5億ドル(約1兆1400億円)だったのに対し、2013年には250億ドル(約2兆円)に拡大するという調査結果も出ています。とりわけアジア市場は伸び率が高いと見込まれているので、当社としてもアジア市場の翻訳家を多く集めて、国内同様に海外でもスピード翻訳を展開していく考えです。
もっとも、当社のクラウドやホスティング、セキュリティサービスを活用してくださっているユーザーは、少なからぬ割合でアジアの国々への進出を拡大させています。ここにはウェブ掲載用のコンテンツ制作や本社と海外法人の文書のやりとりなど、さまざまな翻訳ニーズがあるはず。事業部門同士の連携を深めることで相乗効果につなげたい。
──これから本格的に拡大期に入るクラウドサービスの販路はどのように整備していきますか。
青山 15年余りの販売実績があるホスティングサービスに関しては、すでに6000社を超える販売パートナーがいますが、これら既存の販売パートナー制度がそのままクラウドサービスに当てはまるとは思っていません。今、まさに販売パートナーの方々のご要望を集約している段階で、制度そのものの完成度を高める作業を進めているところです。
また、2010年にグループに加わった大阪に本社を置くGMOクラウドWEST(旧ワダックス)をベースとして、西日本でのクラウドビジネスの営業・サポートにも取り組みます。
クラウドはホスティングよりもさらに門戸を広げ、敷居も下げて、販売パートナーの事業規模や活用の方向性にできる限り合わせられるよう、さまざまなパートナープログラムを整備していきます。場合によってはOEM(相手先ブランドによる供給)や特定顧客のプライベートクラウドとしての活用も可能です。単なる販売代理の関係ではなく、より深く最適化し、選択の幅が広いプログラムに仕上げたい。
従来型のハウジングやホスティングに比べて、クラウドサービスの利幅は薄いですが、シェアを高めて、多くのユーザーに長く使っていただくことで、強大な収益基盤に育つ潜在力がある。ここを重点的に伸ばしていくことで、世界レベルで競争力があるサービスベンダーに成長していきます。
・こだわりの鞄 お気に入りの鞄は、軽量ビジネスバッグとして定評のある「MANHATTAN PASSAGE」。このインタビューの直前にも、「スマートフォン1台と着替えをこのバッグに入れて、シンガポールとマレーシア、タイへ4泊5日の出張に行ってきたばかり」と、使い勝手のよさを実感している様子だ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
ホスティング系クラウドサービスベンダーのなかで、今、グローバル進出に最も積極的なのが、GMOクラウドの青山満社長である。もともとはホスティングとセキュリティをメインに手がけてきたこともあって、クラウド分野ではAmazon Web Services(AWS)などグローバル大手の後塵を拝してきた。
だが、2011年4月には旧社名のGMOホスティング&セキュリティからGMOクラウドという社名に変更。青山社長は「全社一丸となってクラウドに力を入れる」との方針を明確に打ち出している。
世界をみれば、すでに巨大資本がまとまった投資を行っており、厳しいシェア争いになるのは必至。それでも、IBMや富士通など、グローバル大手ITベンダーや先行するAWSといったパブリッククラウド世界大手を相手に、「十分に差異化を図ることができるサービスメニュー」を考案。北米とASEAN地域でのクラウドビジネスの拡大に強い意欲を示す。(寶)
プロフィール
青山 満
青山 満(あおやま みつる)
1967年、福井県生まれ。89年、東海大学工学部航空宇宙学科卒業。航空機器制御コンピュータの開発エンジニアを経て、95年、GMOクラウドの前身のアイルに入社。97年、同社代表取締役。現在に至る。
会社紹介
GMOクラウドの昨年度(2011年12月期)連結売上高は前年度比8.3%増の90億2900万円。営業利益は同28.5%減の7億6100万円。今期連結売上高は同7.7%増の97億2800万円、営業利益は同13.9%増の8億6600万円を目指す。直近はクラウドサービスを本格的に立ち上げるとともに、電子認証サービスの「GlobalSign」やスピード翻訳サービスの拡大にも力を入れる。