高まるSCMの重要性
──「Asprova SCM」を発売した翌年3月、東日本大震災が発生しました。震災後、日本の製造業のサプライチェーンに対する意識に変化はありましたか。
高橋 SCM(サプライチェーンマネジメント)を云々する以前に、生産スケジューラの引き合いが増えています。工場の運営は人間系ではなくコンピュータに任せて、遠隔地の工場を本社から確認しようという動きがかなり強くなっています。一昨年からあった動きですが、昨年はさらに活発になりました。
SCMに関しては、災害からなるべく早く復興するにはどうすればよいのかなど、BCP(事業継続計画)の観点から、中堅、準大手クラスの企業の間で製品導入の検討がなされています。
──「Asprova SCM」の引き合いは増えていますか。
高橋 短納期の要求に応えつつも、過剰在庫が出ないように生産したいという企業がとても多い。製品のライフサイクルが短い、あるいは競合製品を発売されると売り上げが急激に変わるような電子機器の部品を製造している場合、顧客のニーズを満たすためにサプライチェーンをコントロールするのが難しいので、サプライチェーンの可視化や全体最適化を実現できる「Asprova SCM」を導入している企業があります。実績は、導入中の企業を含めて4社程度です。
──既存製品の販売についてはどうですか。
高橋 これからグローバルで生産スケジューラを導入しようとしている日本の企業から、非常に多くの引き合いがあります。ただ、海外の生産拠点にシステムを導入するのは大変です。向こうの担当者に教える必要がありますし、データ設計が欠かせません。ですから、導入のサポート体制を強化する考えです。
中国の企業には、まだまだ売れたり売れなかったりと、波があります。インターネットを通じた販売促進と、営業が1社1社訪問する戦略をこれから固めます。
当社は開発主導型で、人員をどんどん増やしていくタイプの会社ではないので、優秀な人材を少しずつ充実させていきます。そのほか、中国や東南アジアなどで事業を展開しているやる気のあるSIerと試行錯誤しながらやっていきたい。現地資本のSIerも年々レベルが上がってきています。現地での知名度を上げて存在感を出すことで、パートナーになってもらえるようにしたい。
──日系ITベンダーのなかでは、先行して中国の企業向けに実績を残してこられたようですね。
高橋 もともと外国好きなので、最初は米国に行きました。欧州にも行って、失敗を繰り返すなかで、スペインなどの代理店が毎年コンスタントに売ってくれるようになりました。
初めて代理店になったのはスペインの企業で、その後、米国、マレーシア、台湾、香港、やっと中国という感じです。いまだに売ってくれている代理店があれば、そうでないところもあります。最初から成功を目指しても難しい。何度も失敗して、うまく動き出すという感覚でやっています。
──海外事業の進捗は?
高橋 海外での売り上げは、グループ全体で30%くらい。徐々にその比率が高まっています。
・お気に入りのビジネスツール キングジムの合成皮革製ノートカバー「レザフェス ノートカバー」。ノートの差し込みポケットが設けてあって、レポート用紙やメモ帳も差し込むことができる。「それほど使い込んではいないが、メモ書きに使う。本革よりも合皮のほうが軽くて使いやすい」と話し、とくにこだわってはいないそうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
生産スケジューラの国内市場で高い支持を得てきたアスプローバ。2010年6月、「Asprova SCM」を発売し、グローバル戦略に拍車をかけている。高橋社長は、創業当時から一貫して開発の現場に立ち続けてきた技術屋だ。「最初は一人で開発しました。今は若い人がプログラミングしていますが、製品の企画から機能設計、内部設計までをある程度一人でこしらえています」。
一方で、世界中を飛び回り、販路の拡大に力を注いできたフットワークの軽さももち合わせている。現在、中国、韓国、ドイツ、米国、マレーシアに現地法人を設け、世界各国で事業を展開している。売り上げ規模は小さいものの、いち早く中国市場に進出し、実績を伸ばしている。
最近は、サプライチェーンについて顧客に理解を深めてもらうためのドラマ「欠品増やさず在庫を下げろ」を制作したり、セミナーで講演をしたりと認知度アップの活動にも精力的に取り組んでいる。(宮)
プロフィール
高橋 邦芳
高橋 邦芳(たかはし くによし)
1958年、静岡県浜松市生まれ。1984年、東京工業大学物理情報工学専攻修士課程修了。1994年、汎用生産スケジューラの開発・販売会社であるスケジューラー研究所(現・アスプローバ)を設立。生産スケジューラ「Asprova」を独自に開発し、国内トップシェアベンダーに育て上げた。
会社紹介
1994年2月、スケジューラー研究所(現・アスプローバ)設立。同年4月、生産スケジューリングシステム「AutoScheduler」を発売。1998年7月、Planning & Schdulingと提携し、「ASPROVA」の販売をスペイン、ポルトガルで開始。2005年5月、累積販売数が1000本を突破。2010年6月、「Asprova SCM」を発売。生産スケジューラの2011年度国内市場シェア52.4%(テクノシステムリサーチ調べ)。