日立製作所は、情報・通信システム事業で「クラウド」「ビッグデータ」「スマート」を新たな注力分野に掲げ、組織の再編統合をダイナミックに進めている。4月1日付で執行役副社長に就任し、日立グループ全体の経営を担うことになる岩田眞二郎氏(執行役専務情報・通信システム社社長)は、日本市場での成長継続、グローバル市場での競争力向上を実現するには、「グループの総合力をいかに発揮するかがカギになる」と話す。新年度からスタートする新たな中期経営計画策定の方針など、今後の経営展望をうかがった。
組織を統合してソリューション提案に対応
──日立グループは、情報・通信システム事業で、2015年度売上高2兆3000億円、営業利益率8%以上という目標を掲げています。今年度の業績は売上高1兆7800億円、営業利益率6.7%の見通しということですが、目標達成に向けた取り組みの進捗状況をどのようにみておられますか。 岩田 売上高には満足していません。しかし、組織・体制づくりは目標としていた段階まで到達したという手応えを感じています。
戦略としては、すでに発表している通り、新たな注力分野である「高信頼クラウド事業」「ビッグデータ利活用事業」「スマート情報事業」を成長ドライバーの軸に据え、従来からの柱であるプラットフォーム事業、システムソリューション事業の拡大と合わせて、成長の継続を図ります。
三つの新注力分野は当社にとって新たな事業領域ですので、昨年4月、組織を再編するとともに、人材も外部から積極的に招き入れました。従来の日立の人材は、分野ごとの「縦軸」に習熟しているタイプが多い。そこに違った角度から新しい風を入れてくれる人が欲しかったからです。
──近年、日立グループはダイナミックに組織の再編を進めておられる印象があります。組織整備の方向性は、「統合」が大きな流れになるのでしょうか。 岩田 そうですね。新事業領域については、専門の部隊をコストセンターとしてつくりましたが、もう少し大きな枠で関連部門を統合して、プロフィットセンターにシフトさせていこうと考えています。
プラットフォーム事業も大きく組織を変えました。サーバー、ストレージ、ソフトウェアを別々の事業部で展開していましたが、一つの大きな事業部にまとめました。サーバー、ストレージ、ソフトというのはメインフレーム時代の区分けです。多くのお客様は、これらをワンストップで提供してほしいと考えており、従来の体制ではこうしたニーズに応えきれなくなっていました。
一方で、システムソリューション事業は、従来型のシステム構築からクラウドなどを利用したサービス提供への転換を見据え、サービス部門を4月に新設します。執行役もすでに指名しました。
こうした一連の動きの背景には、それぞれの事業分野が不可分になってきているという事情があります。クラウドが普及したことで、システムのプラットフォームや導入の形態は多様な選択肢をもてるようになりました。クラウド、スマート、ビッグデータ、そしてプラットフォームやSIは、ソリューションを構築するための要素であり、ベンダー側には、顧客の課題に合わせてこれらを組み合わせ、ソリューション提案につなげる体制が求められています。
日立グループの強みは、まさにそうした総合力の部分なんです。ITに加えて社会インフラを支える「制御」の技術ももっています。そういう会社は世界でもなかなかないですよ。この強みをぜひとも成果につなげたいですね。
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