伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、グローバルビジネスへ大きな一歩を踏み出した。世界最先端のハードウェアやソフトウェアをベースとしたシステム構築(SI)を得意とするCTCの強みをASEANを中心とするアジア地域へ展開。これまでドメスティックの色彩が濃かった同社にとっては大きな変化だ。タイやマレーシア、シンガポールで一部出資やM&A(企業の合併と買収)の手法を用いて関連会社やグループ会社を増やし、CTCの得意とする最先端ITを駆使したシステムの設計・構築、運用のビジネスモデルを適用する。海外ビジネスの拡大を推進する菊地哲社長に話を聞いた。
最先端の技術をいかにSIに生かすか
──「商社系SIerなのに、なぜかドメスティック」という印象が拭えなかった御社ですが、ここへきてASEANへの進出を加速しておられます。 菊地 先代社長の奥田(陽一)さんは、リーマン・ショック後のダウントレンドから国内ビジネスを中心に業績を回復させてこられたわけですが、私の代では海外ビジネスを拡大させていく意識をもって経営に当たるように心がけています。私がトップのバトンを引き継いだ2012年6月以降、タイの中堅ITベンダーへ45%程度の出資したり、今年2月には米大手SIer「CSC」のマレーシア、シンガポールの2法人を当社グループに迎え入れることを決めました。
──業績面では、2013年3月期に4期ぶりに連結売上高が3000億円を上回るなど、回復基調が鮮明になっています。 菊地 業績については、当社の強みをうまく生かすことができたと自負しています。
ただ、国内情報サービス市場の動向や、ユーザー企業のIT投資の推移をみると、当社を含む主要SIerの業績の伸びほどには増えていない。少し不思議だと感じています。競争は激しいし、ITビジネスの特性としてハードウェアが引き続いて値下がりすることを考えると、自社の強みをもっと伸ばすために、今一度、何らかの投資を行い、これまでとは違う施策を打たなければならない。こうしたこともあって、今期(14年3月期)は売り上げが7%伸びる見込みなのに対し、営業利益は3%増程度と堅く見積もっています。
──御社の強みとは具体的には何でしょうか。 菊地 この会社を経営して1年余りですが、世界の最先端のIT商材をいち早く国内に持ち込んでシステム構築(SI)ができる点にあると感じています。具体的には、アメリカの最先端のハードウェアやソフトウェアの扱いに誰よりも長けているということです。
実際、客先に足を運んだときに、顧客が当社に期待するのは、いかに新しい技術を海外からもってきてくれるかです。最新の尖った技術を組み合わせて情報システムの基盤部分を構築することが、当社が最も強みとするところです。
もちろん、当社も業務アプリケーションの設計・構築やデータセンター(DC)を活用したクラウド型サービスなどは、ひと通り揃えています。ですが、他の主要SIerにはない強みといえば、やはり世界の最先端の技術をいち早く目利きし、自らもこうした技術を扱えるノウハウを蓄積してきたことにあるといえるでしょうね。海外ITベンダーもこうしたCTCの強みをよく知っていて、本社トップが来日したときは、必ずといっていいほど当社に顔を出してくれますし、また私自身も渡米して意見交換をしています。
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