NECソリューションイノベータは、地域社会が抱える課題解決を重点領域に位置づける。NECの主要地域SE子会社7社が統合して発足した同社は、NECグループの中核的なソフト開発会社である。ITを活用した高度な社会インフラを提供する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進する会社であるとともに、一方で、毛利隆重社長は「本当に解決しなければならない課題は地方にある」と捉えて、地域SE会社が統合して発足した自らのルーツを地域社会が抱える課題を発見し、それを解決することに求める。すでに産官学の連携を通じた地域産業振興に向けた取り組みを本格的に展開。「地域から世界へ」を掲げてビジネス拡大を目指す。
従来型の受託ソフト開発は終わりを迎えた
──NECの地域SE子会社7社が統合し、早くも第1四半期が過ぎようとしています。まずは年商2600億円規模の大手SIerとして再出発した狙いをお聞かせください。毛利 NECグループの地域SE子会社は、最盛期で20社ほどありましたが、段階的に統合・再編を行って、今年4月にNECソリューションイノベータとして実質的に1社体制へと移行しました。統合の背景には、地域における受託ソフト開発が終わりを迎えたことがまず挙げられます。そして地域SE子会社の統合によって、グローバルビジネスの拡大を見据えた規模のメリットを追求するのが狙いです、というのが模範回答でしょうか(笑)。
──えっ? では、本当の狙いは別のところにあるのですか。毛利 日本の情報サービスの成熟と、IT投資の首都圏への集中、さらに少子高齢化に伴って人口も都市部へ集中している現状では、かつてのように地域で受託ソフト開発を生業とするのはすでに限界だったというところまでは間違いありません。ただ、1970年代から地域に密着してソフト開発を手がけてきたNECの地域子会社の企業文化や人脈、ノウハウは当社にとっての大きな財産ですので、ここに大きな可能性を期待しているのです。
──地域ビジネスが限界なのに、地域に可能性があるというのは、やや矛盾していませんか。毛利 私は受託ソフト開発が限界だと言っているのであって、地域ビジネスそのものが終焉を迎えるとは考えてはいません。そもそも、ITビジネスというのは、問題発見型、課題解決型であるべきという考えに異を唱える人はいないわけで、じゃあ、わが国の課題はどこにあるのかを見渡せば、最も多くの課題を抱えているのは地方ではないのですか? 日本が「課題先進国」といわれるほど課題を山のように抱えていて、その多くが地方、地域に深く突き刺さっています。
であるならば、全国の地域をルーツにもつわれわれが、その課題や問題がどこにあるのかを探り出し、ITを駆使して解決すれば、わが国が抱える課題の多くを解決できる。だからこそ、当社の社名は、「NECが解決方法を創造する」という意味で「NECソリューションイノベータ」としました。地域が抱える課題を解決できたなら、きっとこれは他の国にもって行っても通用する。先進国でも成長国でも、根が深い問題や課題は、地方に多くあったりするわけです。
企業規模やグローバルうんぬんは、自らのルーツである地域が抱えている問題や課題を解決してこそ生きてくるものであって、会社の狙いというよりは、社会の要請や期待に応えていく結果として、ついてくるものだと考えています。
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