日本情報技術取引所(JIET)は、2015年に20期を迎える。その節目を前に、今年4月1日、JIETは長らく続いていた体制を一新した。二代目の理事長に就任したのは、バリューソフトウエアの酒井雅美社長だ。JIETには大企業から個人事業主まで、あらゆる規模の企業が参加しているが、その大半を占めるのは中小企業。大手SIerの下請けや孫請けを担う企業も多い。現時点では、大型開発案件が目白押しの影響もあってエンジニアが不足しているが、下請けや孫請けの将来はどうなるのか。酒井新体制のJIETが考える中小企業のあるべき姿から、IT業界の今後を探った。
新生JIETが掲げる三つの活動方針
──今年の4月に理事長に就任されたわけですが、もう落ち着きましたか。 酒井 いや、大変ですね。ものすごく大変です。私の時間の5分の4は、JIETの仕事に取られています。
──どのようなことでお忙しいのですか。 酒井 JIETの改革に取り組んでいます。定款から就業規則、組織、予算の組み方まで、すべてを変えようとしています。JIETはNPO(特定非営利活動法人)ですので、その運営についての勉強もしなければならない。会社の経営とはまったく違いますから。また、JIETは、北海道から九州まで、8本部9支部という地域組織をもっていますので、その対応もあります。
──JIETの改革を推進するにあたって、酒井新体制の方針はどのようなものですか。 酒井 短期の計画として、三つの方針を決めました。一つ目は、IT系の他団体との交流です。JIETは仕事と人材を直接マッチングする団体ですが、ほかの団体は委員会や部会を中心に活動しています。活動内容が重ならないので、お互いにコラボレーションをする価値はあると考えています。会員のため、情報化社会のために活動するというのが、NPOであるJIETの大前提ですので、お互いの会員が潤うようなことを模索していきます。
二つ目は、これまでまったくやっていなかった行政への訴えかけです。JIETは、NPOのなかで上位5%以内に入るくらいの大規模な組織ですから、それなりに影響力があります。
──会員は何人ですか。 酒井 法人と個人合わせて約700で、人数でいえば3万5000人になります。中小企業が多いとはいえ、大企業から個人事業主までが会員になっていますので、いろいろな情報が入ってきます。それを生かして、行政に訴えかけていきたい。具体的にはこれからですが、例えば規制があって会員が困っているとしたら、改善策を行政に提案するようなことを考えています。
三つ目が、地域情報化社会の発展への貢献です。例えば、地場の会社同士が交流を深めることができる活動をしていきたいですね。現段階では、まだ一つ目の他団体との交流にとりかかっているところです。
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