中国最大の電子商取引(EC)事業者である阿里巴巴集団(アリババグループ、張勇CEO)は、中国最大のクラウドベンダーでもある。2009年に提供を開始したパブリッククラウドサービス「阿里雲(Aliyun)」は、すでに約140万ユーザーを抱え、中国IaaS市場でNo.1のシェア22.8%(IDC中国調べ)を獲得している。今年3月には、米シリコンバレーにデータセンター(DC)を開設し、グローバルでのサービス提供を開始した。「阿里雲」のグローバル事業を統括している喩思成副総裁に、戦略や今後の展開についてうかがった。
世界最大級のサービスを支えるクラウド基盤
──2009年にサービスを開始した「阿里雲」は、中国最大のクラウドサービスに成長しています。強さの秘密はどこにあるのでしょうか。 喩 「阿里雲」は、アリババが10年以上前に構築し始めたECプラットフォーム「淘宝網」「天猫」や、電子決済サービス「支付宝」の技術基盤を採用したクラウドサービスです。この三つは、すでに世界最大級のサービスに成長しています。したがって「阿里雲」は、これまでに蓄積された経験・ノウハウを取り入れた高信頼のサービスとなっています。
──他社のクラウドサービスと比較した場合の差異点を聞かせてください。 喩 「阿里雲」が提供しているのは、コンピューティング(IaaS)、ストレージ、リレーショナルデータベース(RDB)と、その他およそ20種類のサービスです。ユーザーは、ウェブアプリケーションやERPなど、システムをすべてクラウド上に簡単にマイグレートしたり、つくり込んだりすることができます。
ただ、このメリットはクラウドベンダーが総じて訴えている単なる基本的な効果にすぎません。「阿里雲」の優位性は、それ以上の価値を提供できることにあります。それは、すぐれたビッグデータ基盤として活用できること。データは、以前はシステムを使っている最中の派生物に過ぎませんでしたが、現在では、ユーザーの戦略を決定づける原動力になりました。例えば、「阿里雲」のユーザーでもあるアリババでは、クラウド上に蓄積したデータを分析して、消費者のインターネット上の商品の購入・支払履歴や、色・サイズ・配送場所などの好みまでを読み取ることができます。実際に、こうした情報を活用して、EC店舗へのサービスを向上し、売上拡大を支援しているのです。
──「阿里雲」の事業拡大にあたって、力を入れていることは何ですか。 喩 ソリューションプロバイダやISVなどとのパートナーシップを深めて、エコシステムを形成することを重要視しています。開発面や販売面など、すべての過程において、パートナーは非常に重要な役割を果たしています。
昨年には、パートナープログラム「雲合計画」を始動し、1万社超のパートナー獲得に乗り出しました。市場からの反応は良好で、パートナーの数は、急激な勢いで増え続けています。
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