若手のSIer経営者同士が切磋琢磨する日本情報サービスイノベーションパートナー協会(JASIPA)。駆け出しのSIerが下請けから抜け出し、独自の成長への道筋をつけるための勉強会を活動の中心と位置づけている。IT系の団体のなかでも国や行政に政策提言したり、現業の情報交換や親睦会が中心の団体とは一線を画す。二代目の理事長を引き受けた林義行氏が、三次請け、四次請けから、独自商材を軸にした元請け中心のSIerへと進化できたのも「JASIPAの先輩方の後ろ姿から学んだ成果が少なくない」と話す。
ポッと出のSIerに仕事はない
──IT系の業界団体は、情報サービス産業協会(JISA)をはじめとしてパッケージソフト系、中小SIer系、地域情報サービス系など複数の団体がありますが、林さんが理事長を務めておられるJASIPAはどのような団体なのでしょうか。 中小SIerが集まっている点では、一部のIT系業界団体と似ていると思われがちなのですが、JASIPAは起業して間もないSIerが生き残って、伸びていくにはどうすべきなのかを議論し、追求していく点で、他の団体とは大きく異なります。
駆け出しのSIerって、まずは二次請け、三次請けの仕事から始めることが多いのですが、多重下請けの底のほうの仕事ですと、日銭は稼げても、そこから競争力ある会社に脱皮していくのはとても難しい。JASIPAでは「駆け出しSIerの壁」ともいうべき障壁を乗り越えられるよう支援しています。ただ、支援といってもJASIPAがどうこうするのではなく、あくまでもJASIPA内の各種の「委員会活動」に参加し、そこから若手経営者が自ら学び取って、自らの力で「壁」を乗り越えるヒントを得ていくのが基本コンセプトです。
──林さんご自身もJASIPAの先輩方から学び取ったことも多いということですか。 私は大手システム会社を“脱サラ”して、地元・高崎(群馬県)で、SIerの「ビーエスシー」を99年に起業したのですが、ポッと出のSIerに仕事を任せてくれる客なんて、まぁ、いません。ご多分に漏れず、三次請け、四次請けの仕事をこなしつつ、納期直前になると何日も徹夜して、人手が足らないので人を雇うと、途端に資金繰りが厳しくなる。金策にヒーヒー言いながらも、開発に没頭する日々でした。これでは、成長への突破口を見出せず、たぶん後10年たっても同じことをやっていたでしょうね。
忙しいなかを縫うようにIT系のいろいろな業界団体に顔を出して、先輩方からヒントを得ようと努めたのですが、何というかレベル感が違うのですよ。JISAの方々なんて、それこそ一声100億とか、200億円とかの商談をまとめていくのですが、私とは別世界すぎてまったく参考にならない(苦笑)。
──確かに、SIerもそれぞれの発展段階がありますからね。 他の業界団体にも顔を出したのですが、現行ビジネスの情報交換にとどまっていたり、いわゆる国や行政に対して政策提言を行うことを主眼としていたり、はたまた平均年齢が高かったりとしっくりきませんでした。それぞれの団体の役割がありますので、各団体の活動を否定するつもりはまったくありませんし、尊敬できる部分もたくさんあります。ただ、駆け出しのSIer経営者である私には、あまり参考にならなかった。
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