日本品質は、堂々と世界にアピールできる
──15年は、デジタルビジネスプラットフォーム(DBPF)の「Meta Arc」や、その中核を成すIaaS/PaaS「K5」を発表するなど、富士通のクラウド戦略で大きな動きがありました。 B2Bのシステム構築で培った当社の強みを生かしつつ、従来の業務プロセスだけでなく、ビジネスを強くするためのあらゆるアプリケーションをのせることができるしっかりしたサービス基盤を、富士通が自社商材として整備したというのは、グローバルでの競争力強化という観点からも非常に意味のあることです。パブリック、プライベート、ハイブリッドのいずれにも対応し、高いセキュリティや運用性能を保証できるという大きな強みがあります。
また、このサービス基盤を広く浸透させるためには、どういうシステムやアプリケーションをのせてお客様のビジネスの成長につなげるかという視点も重要です。IoTに代表されるように、あらゆるモノがつながって、データがさまざまなかたちでつながるようになってきているわけですが、お客様自身に、まだデータ活用のノウハウがない。富士通がお客様の新規事業などの企画段階からきっちり入り込んで、先端のIT活用を前提としたビジネスモデルをこちらから提案できるような世界をつくるために、「専門営業」の部隊を業種単位で整備していきます。実証実験をしながら効果的なソリューションを構築していくような仕組みづくりはすでに進めていますし、「この領域なら富士通におまかせ」と言われるような分野をたくさんつくっていきたいですね。
──K5などは、富士通の案件だけでなく、他ベンダーにもIaaS/PaaSとして使ってもらわないとスケールメリットが出ないのでは。 もちろん、SIerなどパートナーに認めていただき、広く活用していただくことは大事で、そのための施策も早期に実行しないといけないと思っています。海外売上比率50%という目標を掲げましたが、グローバルではまだハードの販売にビジネスが偏っているのが実情です。しかし、市場のパラダイムは確実に変わってきている。DBPFを武器に、チャレンジャーとしてチャンスをつかみたいと考えています。
──グローバルで戦っていく際に、富士通が競合と差異化できることは何でしょうか。 富士通の基盤を使ってくれれば、セキュリティにしろビッグデータ解析技術にしろ、より質の高い安心安全なものが提供されるようにしていかなければならないと思っています。基盤にのせるこうした共通サービスの質は、堂々と世界にアピールできるものだと自負しています。実際の運用を重ねることで、さらに継続的に向上させていくこともできます。ただし、地域や国の状況に合わせてビジネスモデルは変える必要があります。現地人材の活用なども進め、ローカルの事情と富士通の方針を両方深く理解した人間が、グローバルで通用する「日本品質」のサービスを最適な方法で提供する。そんな世界が広がっていけば、グローバルで勝てる会社に必ずなれると確信しています。

‘「日本品質」のサービスを最適な方法で提供する。そんな世界が広がっていけば、グローバルで勝てる会社に必ずなれると確信しています。’<“KEY PERSON”の愛用品>“日本代表”として戦う気概 グランドセイコーの腕時計を10年以上愛用している。キャリアの中盤、「そろそろちゃんとした時計を買おうと思って(笑)」手に入れた直後に、海外への赴任が決まった。世界に誇る国産腕時計に、グローバル市場で戦う富士通の姿を重ねている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
上海に6年8か月赴任した経験をもち、海外市場での成長に対する思いは際立っているという印象だ。15年10月に、日本とアジアを一つの営業地域として扱う「One Asia」体制をスタートさせたが、これもそうした思いのあらわれといえよう。「私が中国や他のアジア諸国に駐在していたときに一貫した方針として掲げていたのは、本社の日本人が主役じゃないということ。現地のメンバーに受け入れられない駐在員は帰れというスタンスでやっていた」と話す。日本で実績を残している大手外資系ベンダーをみても、こうした姿勢は必要だろう。
エンタープライズITのトレンドは「所有から利用へ」と移り変わるなかで、ITベンダーのビジネスもサービス化が進む。クラウドビジネスでは先頭を追う立場の富士通が、グローバルでどう強みを発揮し、成長を果たすのか。田中社長の手腕にかかる期待と責任は大きい。(霞)
プロフィール
田中 達也
田中 達也(たなか たつや)
1956年9月生まれの59歳。福岡県出身。東京理科大学理工学部卒業後、80年4月に富士通に入社。国内営業部門で大手鉄鋼、石油、化学分野などを担当。2000年4月、産業営業本部産業第二統括営業部プロセス産業第二営業部長。03年4月より、富士通(上海)有限公司に。09年12月、富士通産業ビジネス本部長代理(グローバルビジネス担当)就任。執行役員兼産業ビジネス本部長、執行役員常務兼Asiaリージョン長、執行役員副社長を経て、15年6月より現職。
会社紹介
ハード、ソフト、サービスともに国内トップレベルの総合ICTベンダー。2014年度(2015年3月期)の業績は、売上高4兆7532億円、営業利益1786億円。15年6月に田中達也氏が新社長に就任。15年10月に発表した15年度上期決算は、売上高が2兆2412億円、営業利益は124億円の赤字となり、同じタイミングでPCと携帯電話事業を子会社化する方針を明らかにした。