ワークフローシステム開発のエイトレッドは、「パートナー支援」と「使い方の提案」の掛け合わせを基本戦略と位置付ける。自ら率先して新規案件の開拓やリード獲得を通じて、販売パートナーがエイトレッドのワークフロー製品を売りやすい環境を整備。また、業種・業態を問わず汎用性が極めて高いワークフローシステムの特性を生かし、新しい使い方を考案する。これをユーザーに広めていくことで「ワークフローシステムの市場そのものを、より大きくしていく」と岡本康広社長は話す。エイトレッドのトップ就任から3カ月目に入る岡本社長の意気込みを聞いた。
“かけ算”でビジネスを伸ばす
――エイトレッドのトップ就任から3カ月目に入りますが、まずは抱負からお話していただけますか。
エイトレッドは、ワークフローシステムを開発しているソフト開発会社です。業績と将来性が評価されるかたちで、今年3月に東証マザーズから東証一部に昇格しました。大規模企業向けの「AgileWorks(アジャイルワークス)」、中堅・中小企業向けの「X-point(エクスポイント)」などを主力商品として、直近では全国2500社余りのユーザーに愛用していただいています。
前任社長の稲瀬(敬一)さんが退任するに当たり、私に後任の声掛けをしていただきました。稲瀬さんは、一部上場までずっと経営の陣頭指揮を執ってこられた方で、エイトレッドという組織を引っ張ってきたカリスマ性のある経営者。それに引き替え、私はそうではありませんので、後任の打診をいただいたときは、「よしやってやるぞ!」と奮起する気持ちと、不安な気持ちが混じり合った複雑なものでした。とはいえ、引き受けたからには、業績と株価、ユーザーや販売パートナー、従業員の満足度をこれまで以上に高めていく心構えです。
――具体的にはどうされますか。経営施策についての基本的な考え方をお教えください。
当社はワークフローシステムを開発するメーカーですので、まずは、よりよい製品開発に努めます。カスタマイズをせず、画面制御だけで複雑なワークフローをこなしていく当社独自のエンジンは、ユーザー企業から高い評価をいただいております。
二つめは見込み案件の獲得と、案件につながるリードの発掘に力を入れます。当社は販売本数の9割を全国40社ほどの販売パートナーを経由してユーザーに届ける販売体制です。当社が率先してプロモーション活動を展開し、販売パートナーのビジネスに役立つ案件情報を伝えていくのが責務だと考えています。
三つめは「使い方」の提案です。ワークフローは業種・業態を問わず使われるもので、新しい使い方を提案することで、国内70~80億円と言われているワークフローシステムの市場規模はもっと大きく成長するはずです。見込み案件やリード獲得でパートナービジネスを一段と活性化するとともに、新しい使い方の提案で市場そのものを拡大させていく“かけ算”で、ビジネスを伸ばしていきます。
2回の出戻りを経て社長に就任
――エイトレッドの主力製品についてお話していただけますか。
大規模企業向け「AgileWorks」の今年度(2020年3月期)の売り上げは前年度比10.7%増を見込み、中堅・中小向けの「X-point」のクラウド版は27.9%ほど伸びると考えています。もう一つ、「ATLED Work Platform(AWP)」は、ワークフローのエンジンをOEM方式で販売する商品です。ビジネスとしては、まだこれからなのですが、例えば販売管理や文書管理、企業間連携などの業務システムの内部で使うワークフローとして組み込んでもらうことを想定しています。
――業務システムには、大なり小なりワークフローの機能が実装されていませんか。
経費精算でもグループウェアでも、確かにワークフローの機能はあると思います。しかし、ユーザーが、もしワークフローの機能がイマイチだと感じていたらどうでしょう。せっかく優れた業務アプリケーションをつくっても十分な評価が得られない可能性もある。だったらワークフロー専業ベンダーである当社のワークフローエンジンを採用していただき、販売管理なりグループウェアなり、そのベンダーにとって価値の中心である部分に開発リソースを集中するという選択肢もあるのではないでしょうか。
昨今のようにSaaSの比率が増えると、いかに継続して課金してもらえるかが重要です。ユーザーの満足度が低いと、解約率が高まって収益を圧迫しかねません。SaaSの割合が増えつつある当社も同じで、ユーザーがストレスなく、必要な機能を使えるかに心血を注いでいます。おかげさまで、大規模企業向け「AgileWorks」の解約率は過去10年間でゼロ%を継続していますし、中堅・中小向けの「X-point」のクラウド版の解約率は0.5%と非常に低水準で推移しています。
――ところで、岡本さんはとてもユニークなご経歴をお持ちですよね。失礼を承知で申し上げれば、IT業界の知る人ぞ知る“愛されキャラクター”だと一部で言われています。
えっ、そうなんですか。まぁ、隠すことではないのですが、私はエイトレッドが属するソフトクリエイトホールディングスグループに2回、出戻りをしています。ざっくり言うと、ソフトクリエイト→富士ソフト→ソフトクリエイト→DMM.comのハードウェア・スタートアップ/ロボット事業→ソフトクリエイトで、現在に至ります。
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