海外人材の採用支援に注力
――ほかに南出体制で新たに打ち出したいと考えていることはありますか?
酒井さんが5年前に、「ビジネスの創出と良い取引の成立を目指して」というビジョンを掲げました。これは普遍的な価値観なので変えていく気はなく、とにかく会員のみなさんが困っていることを何とかしたいです。現在の課題で言うと、採用ですね。
――具体的にはどんなことを考えておられますか。
JIETは海外支部もありますが、海外市場、特にアジア市場とのコネクションはここにきてさらに強くなっている感があって、人材の面でもアジア地域からの採用をやりやすくする環境整備をやっていきたいと考えています。
例えば、バングラデシュでIT人材の教育に携わる方との縁があって、バングラデシュ出身の留学生と日本企業のマッチングをするという動きも出てきています。こういう動きをJIETの活動にもどんどん引き入れていきます。
タイや韓国、台湾といった海外支部でも現地の人材とJIET会員のマッチングの場を設け、会員の人材採用を支援する取り組みはすでに一部行ってきましたが、これもさらに推進します。先ほど申し上げた独自の地域性という意味では海外はその最たるものですから、JIET会員も海外に出て行って人材を求めることで、思いがけない新しいビジネスチャンスを掴むきっかけになる可能性もあると思っています。
――日本の地場の中小SIerなどが海外人材をうまく使いこなし、定着させることはできるでしょうか。
今はまだそういうことを言っている余裕があるかもしれませんが、5年も経てばさらに人手不足が深刻化し、そんなことは言っていられない状況になるでしょう。地場の中小企業だって、変わらなければならないんです。JIETとしては、会員がいち早くそうした課題に対応するための支援をしていきたいということです。海外人材の採用はもちろん、彼らをうまくマネジメントして力を発揮してもらうためのノウハウなどの共有もやっていくつもりです。
海外に出て行った中小の製造メーカーなどは、独自の技術を強みとして、自分たちの力で市場を切り開いていったわけですよね。日本から行った現場のスタッフも、高等教育なんか受けていなくても、必要に迫られてたくましくビジネスをやっているうちに、英語も喋れるようになって現場を仕切っている。そうしないと勝てないということですよ。日本のIT業界も、甘えたことを言っていられない状況に早晩なります。
――在任中の目標を何か設定されていますか。
海外支部をつくった意義など、一般の会員のみなさんにはなかなかまだ十分にご理解いただけていないところもあります。いま申し上げたように、新しいビジネスチャンスの創出や将来の採用に向けたメリットも含めて、海外とのパイプを利用できることの価値をしっかり伝えていくのは重要だと思っています。そして、やはり会員の規模はJIETの活動の推進力になりますから、現在約800社の会員数を、900社くらいには増やしたいと考えています。
Favorite Goods
兵庫県たつの市の「龍野レザー」を使ったカスタムメイドのトートバッグ。欧州の高級ブランドでも使われるレザーに惚れ込んだ。一泊程度の出張まで対応できる大きさもお気に入りのポイントだという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
人材、案件の地産地消を
南出理事長が経営するオーパシステムエンジニアリングは、横浜・関内で創業した。派遣、下請けには手を出さず、創業以来一貫して、中小製造業向けの生産管理システム開発とコンサルティングをメインに手掛けてきた。その中で、中小企業のオーナーには独自の強烈な哲学があることが多いということを学んだという。その独自哲学を無視してはユーザーのためにもならず、ITベンダー側にとっても顧客とのエンゲージメントを損なう結果になることを身をもって痛感した。
「横浜だって支店経済と言われているが、昔はもっと独自の色があった。本牧辺りに品川ナンバーのクルマが止まっていたら、この田舎モンが、みたいな(笑)。どこの地域でも、その地域に愛着がある人材がその地域のユーザーのためになるIT導入の提案をしっかりできるようになることは大事だと思う。人材、案件の地産地消のようなイメージだ」
JIET理事長としての課題意識も、まさにそこにある。東京一極集中の傾向がある法人向けIT市場で、地域会員のニーズにしっかり向き合っていく決意だ。
プロフィール
南出健治
(みなみで けんじ)
1963年8月生まれ。横浜市出身。和光大学人文学部芸術学科卒。大学3年時に株式会社オーパシステムエンジニアリング設立に参画。現在は同社の代表取締役社長を務める。98年12月、日本情報技術取引所(JIET)理事兼神奈川支部長就任。2015年6月にJIET副理事長兼神奈川支部長、今年6月にJIET理事長に就任。
会社紹介
1996年に任意団体として設立。2005年に、広く一般市民の利益を追求するためにNPOとなる。現在の会員数は、法人と個人合わせて、ソフトウェア開発関連企業を中心に約800会員。国内11支部、海外3支部を展開し、各地で開催する会合などを通じて開発案件や企業情報などを活発に交換する「場」づくりを進めている。