バックアップ市場で勢いをつけているヴィーム・ソフトウェア。古舘正清社長は「2024年までにトップシェア獲得は間違いない」と断言する。従来のバックアップがシステムごとにサイロ化していたのに対し、同社の製品ではマルチクラウド時代のデータ活用を見据えた全体最適の提案が可能だという。クラウドへのシフトが進むとなぜバックアップ製品が売れるのか、古舘社長に聞く。
4年でトップシェアは
間違いない
――今年の第2四半期には過去最高の年間経常収益(ARR)を記録するなど、ヴィーム・ソフトウェアはバックアップ市場における成長企業です。バックアップというと、既にコモディティ化した製品カテゴリーにも見えますが、なぜ成長が続いているのですか。
実を言うと私自身、(日本法人の社長という)今の仕事の話をいただくまで、バックアップ市場に興味があったわけではなかったんです。しかし、そのときヴィームのことを調べてみたら、バックアップというよりも、「クラウドデータマネジメント」の考え方を前面に打ち出しており、他のバックアップベンダーとは違うアプローチをしている企業ということがわかり、入社を決めたのです。
成長を牽引している最大の要因は、ITインフラのクラウドへのシフトです。ハイブリッド/マルチクラウドが当たり前の時代になって、データがどんどんクラウド側に置かれるようになっている。以前はオンプレミスのサーバーだけ監視していればよかったのが、今はいろんなところにデータが置かれているので、それらをシングルコンソールで可視化する必要がある。これを実現するのがヴィームのソリューションなのです。
――ヴィームというと、仮想化環境に最適化されたバックアップ製品として登場してきたイメージがありましたが、今はマルチクラウドを見据えていると。
もちろん、足もとの実ビジネスに占める割合では、サブシステム単位で標準化されていないバックアップの仕組みを、まずは仮想化レイヤーで標準化しましょうという段階の案件が主流です。しかし、デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れの中で、自社のシステムをできるだけクラウドへ移していこうと考えるお客様が増えています。また、データというのは企業にとっては一つの大きな資源ですので、そのコントロールは自社で行いたい。しかも再びオンプレミスに戻るということも十分考えられるわけです。そういった意味で、単にバックアップの仕組みを統一するだけでなく、ヴィームのソリューションを利用して、企業全体のデータ管理の仕組みを作っていきたいというお話が多くなっているということです。新型コロナウイルスの影響で当初計画からは1年ほど遅れる見込みですが、それでも2024年までには間違いなく国内トップシェアを取れると確信しています。
――クラウドに対応したデータ保護製品を手がけるベンダーは数多くありますが、差別化ポイントはどこにありますか。
クラウドにデータを持っていけるという点では、他社にも同じような製品はあると思います。ただ、私自身当社の製品のことをお客様の前で「バックアップ」と呼ぶことは少なくなっていて、先ほど申し上げた「クラウドデータマネジメント」という言い方をしています。
単にバックアップを取っているかではなく、オンプレミスからクラウドに至るまで、企業の中にある全てのデータは、モビリティや可視性、セキュリティが確保された状態になっていることが大事なわけです。お客様のCIOクラスの方とよくお話ししていますが、「御社全体のデータがどういう状況なのか、棚卸しされていますか」とお聞きすると、されていないケースがほとんどです。それはまずいので、当社のソリューションを採用していただくかは別として、我々はお客様のデータアセットがどういった形で管理されているか、体系化されたアセスメントを無償で提供し、一緒に考えるきっかけにしていただいています。
もう一つはクラウド環境におけるディザスタリカバリー(DR)です。今どんどんクラウドで重要なアプリケーションが実行されるようになっていますが、DRをきちんと考えている企業は案外少なく、考えている企業でもDRのテストを行ったことがないというケースが多いのです。当社には「Availability Orchestrator」という、クラウドアプリケーションのDR対策をしっかりと提供できるソリューションがあります。
――パブリッククラウドの責任分解点やSLA(サービス品質保証)を超えた事態が発生したときに備え、対策が打てている企業は少なく、そこに対する処方箋を提供できるということですね。
そうなんです。対策が打てていないか、打っていても予行演習できていない。これは非常に大きな問題です。ですので、単にデータを保護するのではなく、マルチクラウド時代におけるお客様の事業継続を考えたご提案ができるという意味で、我々のソリューションはバックアップの枠を完全に超えてしまっています。こういったビジョンまで含めた話になると、他社のバックアップ製品が競合になることはないと自負しています。先ほどのような、クラウド環境のDRや事業継続というお話をすると、大手企業のCIOからも「そんな話は初めて聞いた」「確かに考えなければいけない」といった反応をいただくことが非常に多く、この領域で当社の考え方が進んでいることの証拠だと考えています。
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