DX先進企業が求める
データ管理プラットフォーム
――ただ、バックアップを起点として企業全体のデータ管理の仕組みを変えていくというのは、かなり大きなビジョンで、現実の企業のIT運用とはギャップがあるように見えます。
おっしゃるとおりで、これから企業側も変わっていかなければならない部分があると思います。単なるバックアップの時代は、IT部門の中でもインフラチームに閉じた話でしたが、事業継続性の話になると、アプリケーションチームも関係してきます。CIOが全体を見て、変えていくところは変えていかないと、実現しない世界になります。
また、今までは大手企業のシステムというと、サブシステム単位で別のITベンダーが担当していて、それぞれサイロ化しているケースがよく見られます。これだと全体最適になっていないし、バックアップは保険のようなものとしか考えられておらず、データの活用も進みません。同時に注目すべき動きとして、ビジネスのカギとなるアプリケーションやインフラは、外部のベンダーに依存せず自社や自社グループのIT子会社で作ろうという考えをもつ企業が出てきています。インフラの領域では運用を自動化する技術も進んでいます。運用担当者の仕事や求められるスキルは変わっていきますし、企業とSIerの関係も大きく変化していくでしょう。
――となるとヴィームのソリューションも、DXに積極的な企業ほどスムーズに導入されている状況でしょうか。
はい。DXの文脈で導入いただくケースでは、金融サービスの企業が多いですね。今、金融業が一番DXが急務になっている業界だと感じられます。そしてDXというと、多くの企業ではまず「データ活用」を思い浮かべられるのですが、一方で、そのデータをどう管理していくかを考えることも大切で、特にマルチクラウド時代になるとより重要になります。そういうお話をして、データマネジメントの必要性に気づいていただけたお客様は、導入がスムーズに決まります。また、今後はバックアップしたデータをリストアしなくても分析できるよう、API経由でアクセスするための仕組みを強化するなど、データ活用に向けた機能も充実させていきます。
――保守的と言われている日本市場でヴィームが成長を続けているということは、国内企業の間でも「データマネジメントのプラットフォームを持たないといけない」という考えは浸透してきたということでしょうか。
その手応えは感じますが、まだまだ努力しなければいけないですね。クラウドデータマネジメントという言葉は、他社も同じように言っているかもしれません。しかし、我々はただデータを保護するだけではなく、お客様の事業に注目したご提案が可能です。当社のビジョンをお客様やパートナー各社にお伝えしながら、業界全体でデータマネジメントや事業継続の考え方を変えていきたいと思っています。
Favorite
Goods
いつも持ち歩くシステム手帳に、モンブランのボールペンとシャープペンシルを挿している。特にシャープペンシルを愛用。消しゴムで消すことはあまりないが、手帳にたくさんの情報を書き込もうとすると、細字で書けるシャープペンシルのほうが好都合という。
眼光紙背 ~取材を終えて~
今が一番楽しい!
ヴィーム・ソフトウェアの古舘正清社長が、インタビューの中で質問に対して特に素早く反応し、力強く回答した瞬間が2回あった。1回目は、「日本市場で4年以内にトップシェアとなる」とコメントしたとき。全世界のヴィームのビジネスの中で、今一番の成長を遂げているのが日本という。他国に比べ本格参入が最近だったという要因はあるものの、トップシェア獲得は決してほら吹きの目標ではなく、現実的に達成可能な水準とみている。
2回目は、これまでのキャリアの中で「今の仕事が一番楽しい」と発言したとき。IBM、マイクロソフト、レッドハット、F5と、各分野のトップベンダーを渡り歩いた古舘社長だが、ヴィームの国内ビジネスはまだまだスタートアップ段階。しかし、名門企業にいたころは、新しいことをやろうとしても、既存のビジネスを守りながら取り組まなければならなかった。今は、クラウド時代に求められる理想的なデータ管理のあり方をゼロベースで提案できる。水を得た魚のように、この市場の変化を楽しんでいる。
プロフィール
古舘正清
(ふるだて まさきよ)
1984年、日本IBMに営業として入社。2001年、テクノロジー事業部長に就任。05年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社し、業務執行役員インダストリー統括本部長を務める。その後レッドハット常務執行役員を経て、15年にF5ネットワークスジャパン代表取締役社長に就任。17年12月より現職。
会社紹介
2006年、仮想マシンのバックアップに最適化したデータ保護ソリューションの提供を目的として設立。本社を米オハイオ州コロンバス市に置く。19年の売上高は10億ドル以上、グローバルの従業員数は4000人以上。日本法人は16年4月設立。東京本社のほか、大阪と名古屋にオフィスを構える。