日立情報システムズ(原巖社長)は、仮想化技術をテコに自治体ビジネスの拡大を進める。自治体の情報システムをクライアントごと仮想化することで運用コストを削減。さらに自社のデータセンターでシステム全体を預かることで付加価値を高める。平成の大合併で生まれたシステム特需の反動減に悩む自治体ビジネスだが、仮想化技術を駆使したシステム統合を切り口に需要喚起を狙う。

 財政に余裕がない市町村が多いなかで、新規のIT投資は獲得しにくくなっている。2006年頃まで続いた市町村合併特需の反動減も響く。こうしたなか、同社では仮想化技術によって情報システム統合。運用コストの削減を打ち出すことで競争力の強化を図る。強みとする自治体向け基幹業務パッケージソフトとの相乗効果も期待している。

 具体的には仮想化ソフト開発ベンダーのヴイエムウェアの製品を主軸に据え、この上でオリジナルの基幹業務パッケージソフト「e-ADWORLD(イーアドワールド)」を稼働させる。サーバーの仮想化によるシステムの効率化だけでなく、パソコンで動作するクライアントソフトも仮想マシン化してサーバー側に集約。パッケージソフトの活用とクライアントの集中管理によって運用コストを削減する。情報漏えい対策にも有効だ。

 さらに一歩踏み込み、自治体の基幹システムそのものを日立情報システムズのデータセンターで預かる“サービス型”のビジネスも拡大させる。自治体のパソコンにはクライアントソフトを入れず、すべて自社のデータセンターから配信する方式だ。「実質、客先にシステムを置かないことになるため、出張保守サービスなどの維持コストが大幅に削減できる」(副島忠夫・公共情報サービス事業部自治体システム本部第一設計部長)のがメリット。

 今年4月には仮想化技術を駆使したサービス方式で、東京都小笠原村の基幹業務システムの稼働にこぎつけた。同村の業務をe-ADWORLDで動かし、かつサーバーとクライアントの両方を同社のデータセンターに収容。業務システムをネットワークを経由して提供するサービス型に切り替えた。立地条件の制約から最大5Mbpsの低速の衛星回線しか確保できなかったが、仮想化技術によって「ストレスを感じることなく利用できる」のが売り。

 サービス方式を採用し、かつ仮想化されたシステムをデータセンターから配信する形をとった自治体顧客は小笠原村が初めてのケース。今後は顧客数を増やすことで「規模のメリットを拡大」させ、ライバルとの競争優位性を高める。こうした取り組みを突破口に自治体のIT投資を引き出し、ビジネスを伸ばす考えだ。