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新ツールの研究 日立製作所の「SIナビ」 システム基盤開発、約4割工数削減

2008/11/03 21:12

週刊BCN 2008年11月03日vol.1258掲載

「Cosminexus」販社限定で無償配布

 日立製作所(古川一夫社長)が10月上旬に発売したWebアプリケーション開発・実行基盤「Cosminexus V8」。機能向上の発表の裏で、日立は「業界初」というツールを同製品の販売パートナー向けに用意していた。それが「SIナビ」だ。Webアプリシステムの基礎部分にあたる基本・詳細設計業務を効率化するツールで、システム基盤開発の約40%の工数を削減できると日立は豪語する。製品の機能や技術だけで差別化が難しいAP開発・実行基盤市場で、他社と差別化するためにこのツールを販社に限定して無償配布する。企画段階から約2年かけて作り上げたSI支援の戦略ツール提供の理由とその中身をみる。

 一般的なWebシステムの基盤開発は、主に四つに区分することができる。(1)要件定義・見積もり(2)基本設計(3)詳細設計・構築④テスト──がそれだ。「SIナビ」はこのうち、要件定義・見積もりの一部と基本設計、詳細設計・構築業務をサポートする。この分野は、システム全体の安定性を左右する中核にもかかわらず、SIerは「属人的で体系立てて作業していないケースが多い」(ソフトウェア事業部)という。加えて、「開発者が不足しているのに開発スピード向上も求められている」とも。日立は、この点に着眼した。販売パートナーであるSIerに対して、この分野を効率化するツールを用意すれば、パートナーのSI競争力は高まるとみて、2年ほど前からツール化に動き出していたのだ。

 Webアプリ実行・開発基盤市場は、製品自体の機能や技術はどのベンダーも似たり寄ったりで、それだけでは差別化は難しい。ツールを付加価値として販売パートナーに対し無償提供すれば、既存パートナーの満足度向上と新規販社の獲得に貢献すると読んだわけだ。

 SIナビを具体的にみると、縦に操作画面を3区分し、左にシステム構築の大枠ステップ、中央に実際の作業フロー、右に作業に関連する作業説明を明記する(左図参照)。作業者はステップと作業フローに従って項目を入力すれば、基本・詳細設計が終わるという仕組みだ。パラメータ仕様書を自動生成してExcelファイルとして保存することもできる。構築したいシステムとSIナビを動作させるPCがつながっていない場合は、実行ファイルを作成し、構築したいシステムで動作させる仕組みも持つ。

 日立の試験システムでSIナビを使った場合では、基盤開発の工数を40%削減することができた。また、必要なスキルは一般的なWebアプリシステム構築を知っていれば問題ないという。

 このツールを日立は、12月6日にベータ版、3月には正式版を無償配布する。

 入手するには、「Cosminexus」の販売パートナーであることが基本条件だが、新規パートナーの獲得のために、「ベータ版は販売パートナーでないSIerにも広く配布する」(砂田英昭・ソフトウェア事業部アプリケーション基盤ソフトウェア本部主任技師)方針だ。
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