クラウド時代に主導権を握るのは誰か――。NTTコミュニケーションズ(NTT Com、和才博美社長)は、通信事業者のビジネスモデルが、到来しつつある新時代に即応していることをアピールしている。ユーザー企業は、クラウドに信頼性や安全性を求めている。その要望に対応するために、これまで回線サービスで蓄積してきたノウハウを生かすというのが同社の戦略だ。

通信事業者がクラウドサービスに適していることを訴える海野忍副社長
 このほど幕張メッセで開催されたネットワーク関連のイベント「Interop Tokyo2010」で、NTT Comの海野忍副社長が「キャリアから見たクラウドの意義」と題した基調講演を実施した。この講演で同社が訴えたかったのは、通信事業者が提供するサービス型モデル「キャリアクラウド」の優位性だ。海野副社長は、「コンピュータの進展に伴い、ネットワークも変遷を遂げている。現在は、クラウド時代を迎えつつある。そのなかで、ますますネットワークの重要性が高まってきている」と説明。ネットワークの高速化や低料金化、グローバル化などによって、ユーザー企業は世界中のアプリケーションを必要な時にストレスなく利用できるようになった。これには、通信事業者が大きく寄与していると同社では自負している。「これまで通信事業者は回線サービスをはじめ、サーバーのホスティングやVPNなどサービスを提供し、しかも国内外でクラウドを支えるネットワーク網を敷いている」。ネットワークを運用する通信事業者がクラウド時代に即応した取り組みを進めていることを訴えたわけだ。

 ユーザー企業が問題視しているセキュリティに関しては、「仮想ネットワークジェネレータ」と呼ばれる、アクセス権限のあるユーザーのみに接続手順を伝えることが可能な装置をネットワークインフラに構築している。海野副社長は、「ユーザー企業は、信頼性の高いクラウドサービスを活用するべきで、責任のある事業者を選択することが望ましい」としている。

 同社は、ネットワーク基盤をベースとするクラウド環境「BizCITY」シリーズをラインアップとして揃えている。現状で提供しているホスティングサービスやストレージなどのサービスをはじめとして、今後もサービスを拡充する計画だ。また、回線サービスについては、日本に加えて米国や欧州、香港、シンガポールなど国内外を合わせて5拠点で提供。海外の通信事業者に依頼するよりも、身近な国内の通信事業者に依頼したほうが安心できるという海外進出を目指す日本企業の意識を捉えた取り組みを進めている。アフリカには現段階で回線網を敷いていないが、「進出する企業があれば、すぐにでも対応する」との考えを示す。

 回線サービスやホスティングが提供できるという環境に加え、SaaSによるアプリケーション提供も拡充してくれば、通信事業者がクラウド時代に主導権を握る可能性は十分にある。SIerにとっては、手強い競合相手といえそうだ。(佐相彰彦)