ニュース
世界で戦うパタゴニア、グローバル・オペレーションの実現に向けてシステムを刷新
2011/04/12 10:26
業務の正確さ、スピードを向上
パタゴニアが販売管理システムの社内検討グループを立ち上げ、要件整理を開始したのは、1999年6月。同年10月にパッケージソフトの評価に取りかかった。業務要件と業務テンプレートのマッピングを開始したのが2000年2月で、8月には直営店6店舗での本番稼動を迎えた。2001年9月にインターネット受注機能を追加し、2002年に直営店の在庫管理機能の利用を開始している。この時点で、利用店舗は9店舗にまで拡大した。2007年、米国本社とヨーロッパ、日本の3拠点の情報をERP上で統合するために、新システム導入の検討を開始した。2009年には、先陣を切って米国本社でERPが本番稼働。日本支社はERP導入に向けて、既存システムの再構築に取り組んでいる。
まずは、日本支社の取り組みから説明していこう。1999年、販売管理システムの導入に際して事前に設定したゴールは、業務の属人的な部分を排除してプロセスの標準基盤を確保することや、カタログ販売の受注業務をスムーズにこなす処理応答速度の確保、システム安定性の改善による基礎数値の信頼性向上、補充精度・在庫回転率の改善、顧客からの定量的で的確な情報収集などだった。
導入を進めるにあたっては、標準的なパッケージを利用し、なるべくパッケージに業務を合わせることで、これまでの業務のムダや属人的な部分を排除。必要最低限の機能を実装して、カスタマイズをなるべく行わないことを念頭に置いた。さらには、システムを利用する現場のインセンティブを活用してリソースを抑えながら、若手中心の体制で取り組んだ。ベンダーは、内田洋行にサポートベンダー3社を加え、4社体制で臨んだ。
「スーパーカクテル」の選定ポイントは、パラメータ数が海外パッケージに比べて約100分の1で、実際に機能を確認しながら業務プロセスとシステムを構築できることが一つ。「パラメータが何千にも上るパッケージは使いこなすのが大変。しかも高額だった」(パタゴニア日本支社の佐藤修オペレーションズ・ディレクター)。また、国産パッケージで、導入実績が豊富であるということも選定の理由となった。
同社には、卸売と直営店、インターネット・カタログ販売という三つの流通形態がある。三つの現場では、「スーパーカクテル」をマーケティング活動に役立てており、その導入効果は確実に数字に現れている。
直営店では、POSデータで定量的な販売状況を確認。カタログ販売で、カタログ請求に至る経路や送付したカタログの時期と種類、顧客の売買履歴などを把握している。インターネット販売でも、カタログ販売と同様の情報に加え、顧客の来店経路や関心事などを定量的に掴んでいる。卸売では、シーズン前からのディーラーからの受注で、シーズン数か月前から顧客ニーズを全国的に把握している。
「スーパーカクテル」と、2000年7月まで約4年間利用していた手組みの販売管理システムとの差は歴然としている。「スーパーカクテル」の導入で、カタログ販売部門では、受注情報の検索時間が約3分から約15秒に、顧客の検索が約5-45秒から約1秒に、製品在庫状況の検索が約5-45秒から約1秒になったほか、顧客との平均通話時間は約1分短縮されるなどの改善がみられた。
カタログ販売部門で、顧客からの電話注文で商品が在庫切れの場合、直営店用の在庫を確認して即座に回答できるようになった。旧システムでは、他部門の在庫参照と在庫引当ての確認に3分以上を要し、電話をいったん切って在庫を確認した後に、スタッフが顧客にあらためて電話をかけていた。「スーパーカクテル」の導入で、システム上の在庫は、最後の1個まで販売できるまでに在庫精度が向上したという。
このほか、発注・入荷・受注・販売・在庫移動の各履歴データを蓄積し、時系列での業務分析ができるようになったことで、業務の平準化と計画化に着手。ピーク時の業務の山をあらかじめ調整して時期をずらす平準化作業をすることで、同じ倉庫スペースで約3割多くの製品在庫を扱うことができるようになった。
卸売、カタログ販売、直営店のそれぞれの製品在庫は、旧システムでは夜間バッチ処理で反映していたが、「スーパーカクテル」では相互の在庫融通を即座に処理できるようになった。また、シーズンを越える在庫管理も実現。定番製品の在庫数をシーズンを意識せずに参照できるようになり、販売機会の損失が少なくなったという。
運用コストの側面からは、運用障害の発生低減に伴い、年間200万円程度を削減。カタログ販売部門は、約20%の受注業務効率の改善に成功している。
関連記事
<解剖!メーカー流通網>57.内田洋行 販売チャネルの再整備を急ぐ ユビキタスで相乗効果狙う