「多様性」に潜む商機

 ASEANは文化や言語、宗教などの面で多様性に富む地域だ。例えばマレーシアでは、主要な言語はマレー語、中国語、タミール語、英語で、宗教はイスラム教、仏教、キリスト教、ヒンドゥー教という具合に、まるで全世界を凝縮しているような感じだ。多様性は、商慣習に影響を与え、事業展開のうえでハードルになる場合もあるが、一方で、多様性に商機が潜むこともある。

 マレーシアの首都、クアラルンプールの街中には、マレー語を表記するために使う「ジャウィ」と呼ばれる文字のほかに、漢字が溢れている。マレーシアの日常生活には中国の文化が深く根づいていることを物語っている。実は、マレーシアの人口2995万人(2013年、マレーシア統計局)のうち、約25%が中国系の民族に属する(外務省)。そういうこともあって、貿易に関しても中国との絆が強い。13年のマレーシアの貿易相手国として、中国は輸出で2位、輸入では1位と確たるポジションを占めている。

 マレーシアの中国系住民は、日本のITベンダーにとって、有力な「販売チャネル」になる可能性がある。彼らはビジネスにおいて、緊密なネットワークを築いているので、その人脈を生かせば、リーチできる市場の幅が大きく広がることになる。実際、日立システムズの執行役員で、Hitachi Sunway Information Systemsの会長を兼務する齋藤眞人氏は、「中国系のネットワークを使い、ITサービスを販売したい」として、中国系住民とのパイプづくりに力を入れて、事業拡大につなげることを方針に掲げている。

 宗教の面でみれば、ASEANは、マレーシアやインドネシアを中心に、日本のビジネスパーソンにとってなじみの薄いイスラム教が普及しているという特徴がある。イスラム教では、食材や調理法に関してイスラム法に合った食べ物を「ハラル」として認証したり、銀行は利子を取ることが禁じられていたりと、落とし穴になりかねない独特のルールが数多く存在する。そう考えると、ASEAN諸国の多様性はビジネスにとって「諸刃の剣」になるが、日本のITベンダーは、中国系住民の協力を得るなど、プラスに働く側面をうまく引き出せば、商機をつかめるだろう。(ゼンフ ミシャ)