IDC中国(霍錦総裁)は、3月2日、2015年の中国IT市場の6大トレンドを予測した。中国の国策を策定する「両会」(全国人民代表大会=全人代と全国人民政治協商会議=政協)の今年のテーマ「4つの全面」をもとに考察したもの。「4つの全面」では、「ゆとりある社会の全面的な構築」「改革の全面的な深化」「法による国家統治の全面的な推進」「厳格な基準に沿った党内の全面的な統治」を掲げている。

2015年の中国IT市場6大トレンド

 IDC中国が予測した2015年ITトレンドの一つ目は、全体IT市場が中低速の安定成長の段階に入る「穏成長」。2014年の中国のGDP成長率は7.4%と過去24年間で最低水準だったが、IT市場でもPCの販売台数の伸びがマイナスになり、スマートフォンやタブレット端末の販売も成熟期に入るなどして、市場全体は前年比で5%程度の成長になるという。

 ただし、法人IT市場については、引き続き10%以上の安定成長が期待できると予測。中国政府がGDP成長率7%を維持するために重要視している食糧・水利、交通、生態・環境保護、高齢者福祉サービス、情報通信網や石油・ガスなどの重大ネットワーク、石油・ガス・鉱産物資源の確保の7分野が、とくにIT市場の成長を牽引するとしている。すでに日系IT企業では、NTTデータが交通分野で吉林市や現地企業と協力して、渋滞予測・信号制御シミュレーションの実証実験を推進。また、高齢者福祉サービス分野では、NECや日立システムズ、独立系SIerのNSDなどが自社ソリューションの開発・提供に力を注いでいる。

 二つ目は、政府主導の改革推進によって、IT企業が短期的な利益を得にくくなる「促改革」。国有企業や自由貿易区の建設、金融、土地などの各分野で60項目の改革が行われ、IT購買周期が長期化することによって、短期的にIT企業は利益を得にくくなるという。ただし、長期的には、政府や財務関連の機関を中心に、IT投資が増加して利益が見込めると予測している。

 三つ目は、各種業界のビジネスモデル再構築が新たなIT需要をもたらす「調結構」。製造業の現代化や、サービス業の生産性向上など、各種産業でモデル再構築が行われる。例えば、日立ソリューションズ(中国)では、中国政府が工業化と情報化を組み合わせる「兩化融合」を推進していることを商機と捉えて、浙江省・嘉興市と協業し、現地の中小企業に向けたSaaSビジネスに着手している。

 四つ目は、IT業界のビジネス環境の清浄化が進む「反腐敗」だ。中国政府が汚職などの不正行為を厳格に取り締まることで、短期的には、政府のIT購買周期が長くなったり、発注済みプロジェクトが凍結するなどの影響が考えられる。また、高級レストランや娯楽施設、ホテルなど、ラグジュアリー業界にも影響は及び、同分野でのIT投資も減少する。しかしIDC中国は、中長期的にはビジネス環境が改善されることで、IT企業は自身の実力に見合ったビジネスができるようになるとの見解を示している。

 五つ目は、国民向けサービスが新たなIT市場の成長ポイントになる「恵民生」。「4つの前面」では「ゆとりある社会の全面的な構築」を掲げており、社会保険や医療、教育、養老、就業、公共安全、食品・薬品安全、社区サービス、家庭サービスなどの分野でITニーズが期待できる。

 六つ目が、経済リスクや国家安全保障を支えるITニーズが高まる「危険防止」だ。債権・債務や輸出のリスクを低減するため、クラウドやビッグデータの需要が旺盛になる。また、国家安全保障の観点から、中国政府が国産IT製品を優先的に採用する動きがさらに活発化するという。現状、日系IT企業がプライムで政府系案件を獲得することは難しいが、状況はさらに厳しくなりそうだ。IDC中国では、海外ベンダーは、従来のようにディストリビュータや販売代理店として中国企業を扱うのではなく、資本参加や合弁会社を設立するなど、中国企業との密接な関係を構築することが求められると指摘している。(上海支局 真鍋武)