業務ソフトメーカー大手のピー・シー・エー(PCA、水谷学社長)は、10月初旬から12月初旬にかけて、全国11都市でパートナー向けイベント「PCA戦略フォーラム 2017」を開催した。業務ソフトの特需を生むと期待されていた消費税率10%への引き上げが2019年10月に再延期され、市場が停滞する懸念もあるなか、同社は6年ぶりの新製品をリリースすることを発表。パートナーの新たなビジネスチャンスにつながる目玉商材として、フォーラム参加者に強くアピールした。

Xシリーズの後継はDXシリーズ

水谷 学
社長

 11月10日の東京会場では、水谷社長が開会の挨拶に登壇し、2017年のPCAの戦略について概略を説明した。水谷社長は、「当初は、消費税10%対応の話が戦略フォーラムの話題の中心になる予定だったが、さらに2年半延期されるという結論が出た。これはあまりにも先なので、その代わりというわけではないが、非常に大きな新しい発表を用意した。PCAは、従来の主力であるPCA Xシリーズの後継製品として、『DXシリーズ』を年明けにリリースする」と宣言。DXシリーズの特徴については、「最新の.NET Framework 4.6に対応し、Windows 10、64ビットの環境で使いやすくなった。機能を大幅に改善し、ナチュラルなインターフェースも備えている」と強調した。

 また、これまでと同様に、競合への差異化ポイントとしてクラウドへの注力は継続する。同社は、今年4月に「PCA Web-API」をリリース。従来はクライアント実行型のAPIしか用意されてなかったが、Web-APIにより、PCAクラウドの基幹業務データと他のクラウドサービスを直接連携させることができるようになった。その第一弾の事例として、PCAクラウドとサイボウズのPaaS「kintone」との連携を実現したが、水谷社長は、このほかにも他社商材との連携ソリューションが続々生まれていることを紹介した。「フォーラムの展示会場では、9種類のWeb-API連携サービスを展示している。kintoneに加えて、ヤマト運輸の送り状発行システムや、Excel感覚で使えるSCSKのWebアプリ作成・運用クラウドサービス『CELF』など、PCAクラウドと柔軟に連携させることで新しい価値をお客様に届けられる製品のラインアップがどんどん拡充している。PCAクラウドのユーザー数は8000社を超えたが、成長をさらに後押ししてくれると期待している」(水谷社長)。

 なお、DXシリーズはオンプレミス版とクラウド版を同時にリリースする予定で、クラウド版については、PCAがクラウドインフラを用意し、現在「PCA クラウド」として展開しているSaaS版の提供のほか、サードパーティのIaaSと組み合わせたクラウド運用にも対応する。PCAクラウドの既存ユーザーは、現行のプランのままでDXシリーズを利用できる。
 

組織改正でパートナー支援体制も強化

 さらに水谷社長は、クラウドビジネス拡大のための組織改正を行ったことも説明した。PCAクラウドは、Xシリーズの顧客層よりも大規模な中堅企業層のユーザーも多く、同社は、Web-APIにより、PCAクラウドの基幹業務システムデータを活用したソリューションをより幅広く提案できるようになったため、中堅規模の顧客が一層急ピッチで増加するとみている。そこで、PCAクラウドを核としたクラウド連携ソリューションを提案するパートナーを包括的に支援する組織として、パートナー&広域事業部を10月1日に発足させた(「週刊BCN」1650号で詳報)。水谷社長は、「より大きな案件をクラウドで獲得できるような強力な体制を構築していく」と力を込めた。
 

園田信彦
部長

 続いて登壇した同社戦略企画部の園田信彦部長は、DXシリーズのコンセプトや新機能、Web-APIを活用したクラウド連携ソリューションの事例や顧客への提案例などをより詳細に解説。幅広いニーズに応えられる製品ポートフォリオが整いつつあることを踏まえ、「パートナーの皆さんとともに、企業規模や業種などでターゲットを絞って市場を攻めていきたい」と会場に呼びかけた。

開発担当者が語るDXシリーズのキモ

 現行の PCA XシリーズからDXシリーズへ──。新たに加えられた「D」の文字には、「Dual」、「Disclose」、「Decision」、「Diversity」の四つの意味が込められているという。オンプレミスとクラウドの二者(Dual)を柔軟に選択・切り替えられる、基幹系システムの情報を横断的に活用できる世界を広げるべくAPIの公開(Disclose)をさらに推進していく、経営層の意思決定(Decision)とその社内への浸透をサポートする、テレワークなど多様な働き方(Diversity)に対応した機能を備える、といった製品コンセプトが反映されている。
 

齊藤彰吾・システム開発部部長(左)と加藤昌明・システム開発部次長

 DXシリーズは、会計の「PCA会計DX」が現行バージョン比で164項目の新機能・機能改善を実現するなど、水谷社長の言葉を借りれば、「機能を大幅に改善」した。そのすべては紹介できないが、機能改善のポイントについて問うと、開発責任者の齊藤彰吾・システム開発部部長は、「会計での合計残高試算表の補助展開や一括承認の絞り込み条件追加などは、ERPからのリプレースユーザーの要望に応えた新機能」と説明。より大規模なユーザーのニーズに対応していることを示唆した。さらに、「タスク共有や一斉通知などに活用でき、社内のコラボレーション、コミュニケーション効率を向上させるリマインダー機能も自信作」(齊藤部長)だという。

 開発部隊は、ひとまず1月のリリースに向けて最後の追い込みをかけているが、リリース後も当然、継続的なブラッシュアップに取り組む。加藤昌明・システム開発部次長は、「APIのさらなる拡張は重要なテーマ。SIパートナーの声なども聞きながら、より使いやすいAPIを増やしていくのがミッション」と意気込む。(本多和幸)