ソフトバンクは9月28日、IPアドレスを使わない通信技術「NIDD(Non-IP Data Delivery)」を利用した商用環境での接続試験に成功したと発表。同時に、商用環境での試験サービスを開始した。なお、NIDDはLTEの通信規格「NB-IoT」上のサービス。

 
宮川潤一
副社長兼CTO
NIDDは、2018年6月に3GPPが標準化した技術で、IoTデバイスからネットワーク設備までの通信をIPアドレスなしで可能にする。これによりデバイスのマルウェア感染の防止、省電力化、通信エリア拡大を実現。初期設定が不要となることから、IoTデバイスの大量展開が容易になる。また、接続試験の成功を受け、NIDDを使った商用環境での試験サービスを開始するとして、サービス事業者を募る。すでに水ingと第一環境とともに協議が始まっている。

 宮川潤一副社長兼CTOは「NIDDによって、われわれのIoTは完成形になった」と自信をみせる。これまでIoT導入のハードルとなっていた課題をNIDDによって解消することでNB-IoTのさらなる普及を目指す。

 情報通信研究機構によると、17年の年間総パケットの攻撃ターゲットのうち、約55%がIoTデバイスを対象にしており、IoTデバイスにマルウェアが感染する危険性が高まっていると警鐘を鳴らす。NIDDはネットワーク設備からIoTデバイスまでの通信でIPアドレスを使わないため、攻撃者はデバイスに到達できない。

 また、電力消費に関して、ソフトバンクは以前より削減に取り組んできたが、それでも2~3年周期で電池交換が必要で、「まだまだ足りなかった」と宮川副社長は語る。IPアドレスがなければ、暗号化データの送受信、ユーザー認証といった通信時間がなくなり、データ容量も減る。これにより、70%の消費電力を削減できるという。

 大量展開について宮川副社長は「IoTの神髄」だと、特に重要視する。通信にIPアドレスを利用する場合、ネットワーク設定やユーザー登録といった初期設定を小さなIoTデバイス一台一台にしなければならないが、「今後、スマートシティーに向けて数億という単位でデバイスを展開する際、そういった仕組みは現実的ではない」と語る。NIDDでは、電源を付けるだけでソフトバンクのIoTプラットフォームに登録されるため、初期設定の手間は大幅に軽減できる。

 宮川副社長は、NIDD実装後のNB-IoTで想定されるユースケースとして防犯、社会インフラ、農業といった分野での利用を挙げた。また、今回の接続実験では「Amazon Web Services」「Microsoft Azure」「Alibaba Cloud」「Google Cloud Platform」の四つのパブリッククラウドとの接続に成功しており、NIDD実装後のNB-IoTの間口は広い。

 現在は最終的な仕上げの段階で、正式な提供は19年春頃を予定している。宮川副社長は「早急に日本でNIDDをものにすることで、多くのメーカーやベンダーがグローバルに打って出られるようになる。IoTを日本の産業にするためにも、ぜひドコモやauにもNIDDに取り組んでもらいたい」と呼び掛けた。(銭 君毅)