メルコホールディングスの中核企業のバッファローが4月12日に開催した大容量NAS「TeraStation(テラステーション)」15周年の会見では、これまでのNASビジネスを振り返るとともに、同日発表したSIer向け無料サポートサービスの「キキNavi」を軸とした、今後の事業戦略を明らかにした。取締役の石丸正弥ストレージプロダクト&サービス事業部長は、「2017年にスタートしたお客さまのデータを守る『データ復旧サービス』が、小さいようで大きな転換点だった」と語った。

石丸正弥ストレージプロダクト&サービス事業部長

 04年12月に初代「テラステーション HD-HTGL/R5シリーズ」が発売になったころは、インターネット回線がADSLからFTTHに高速化するなど、インターネットが急速に普及していった。NASという言葉がまだ聞き慣れず、ストレージが外付けHDDで十分という中で、バッファローはいち早くテラステーションを市場に投入した。

 石丸事業部長は、「ユーザー同士がネットワークでつながってファイルを共有し始めると、外付けHDDでは物足りなくなると考えた。また、担当者の稟議が無くても買える価格設定にしたのもポイントだった」と当時を振り返った。安価な価格設定で一気に市場を制圧する、メルコらしいマーケット戦略が反映されていた。

 04年当時、300GBの外付けHDDの価格が約4万円だったのに対し、初代テラステーションは1TBで10万円を切る価格設定にしたのだ。結果的に年間3万台以上を販売し、電子機器の総合展示会「CES」でも「NEXT BIG THING CES 2005」を受賞するなど高い評価を受けながら、一気に事業を立ち上げることに成功した。

 シルバーだった筐体から「ギンテラ」と社内で呼ばれていたその商品は、評価を受ける一方で「クレームも多かった」という。堅牢性を重視するあまり、HDDが壊れても交換することができなかったのだ。
 

 こうした苦い経験も経ながら、08年までユーザー視点を徹底したメンテナンス性の向上や機能に磨きをかけていった。11年に、小規模オフィス向けSOHOからSMB、大企業向けエンタープライズまで多彩なラインアップを拡充し、18年に累計出荷台数100万台を突破した。
 

 NAS事業が大きく転換したのは、冒頭で語られた17年に始めたデータ復旧サービスだった。NASや外付けHDDなどの保証期間のトラブルは無償で対応し、有償でも対応メディアと障害レベルに応じた一律固定料金で対応するサポートサービスだ。それまで料金が不明瞭でユーザーがあきらめていたデータ復旧を、明朗会計にすることで安心して依頼できるように変えた。

 そして、19年4月17日からテラステーションをリモート管理できるSIer向けの「キキNavi」を、無料サービスとして開始した。最近のビジネスでは、月額有料課金などのサブスクリプション型サービスが主流となりつつあるが、この点について石丸事業部長に聞くと「まずはSIerなど現場ユーザーの困りごとを無料サービスで解決することで、テラステーションを使うユーザーを増やしていきたい」と応えた。

 キキNaviを運用・維持するには、人、金、時間のリソースがかかる。しかし、そのコストを自社で負担してでも、管理者の業務負担を減らして満足度を高め、結果的に顧客と長く深い関係を維持することを狙う。一見、地味に見える取り組みだが、バッファローの今後のNASビジネスに対する本気度が伝わる。