【昆明発】中国の騰訊控股(テンセント)は5月21日~23日、中国雲南省昆明市で、クラウド部門のイベント「テンセント・グローバル・デジタル・エコシステム・サミット」を初めて開催し、パートナーエコシステムを強化する方針を示した。背景には、成長を支えてきたゲーム事業とは別に、クラウドを軸とした企業向け事業を新たな成長の原動力として育てる狙いがある。各ITベンダーが激しい争いを繰り広げる中国のクラウド市場で、テンセントはシェアを拡大できるのか。(取材・文/上海支局 齋藤秀平)

個別開催のイベントを一本化

 テンセントは、ゲーム事業を中心に業績を拡大してきた。しかし、2018年は未成年のゲーム依存を問題視した中国当局の規制により、一時、新作ゲームの発売が認可されない状態に。全売り上げの約4割を占めるゲーム事業に不安感が漂う中、18年9月の組織再編で企業向け事業の体制を強化した。

 こうした状況を受け、今回のイベントは、これまでパートナーやインターネットなどのテーマごとに開催していた三つのイベントを一本化。クラウド部門で最高峰の大会と位置付け、参加者に対して企業向け事業にかける意気込みを示した。
 
テンセントの劉熾平総裁

 初日の基調講演では、テンセントの劉熾平総裁が登壇し、「デジタル化は、経済や社会の発展に大きなチャンスをもたらしている。デジタル技術と情報技術は、グローバル経済の重要なカギになっている」と説明。そのうえで「伝統産業は、デジタル化によって飛躍的な発展を実現できる。テンセントは、パートナーと一緒に各業界でエコシステムを構築することを希望している。エコシステムをさらに開放することで、パートナーとともに各産業をアップグレードするソリューションを提供していきたい」と呼びかけた。

中国最強のクラウドエコシステム

 「私たちは、中国最強のクラウドエコシステムをつくる」。パートナー戦略に関するセッションで、テンセントクラウドの謝岳峰副総裁は、参加者に対してこう呼びかけた。

 テンセントによると、テンセントのクラウド事業は現在、6000社のパートナーを抱え、金融や政府、教育などを中心に50万社以上の顧客を持っている。19年5月までに、パートナーとともに作ったソリューション数は90以上になっている。

 体制強化などで企業向け事業に力を入れた結果、クラウド事業は成長を継続。IDC中国がまとめた18年下半期の中国IaaS市場のシェアでは、前年の10.3%から11.8%に伸ばして2位となった。

 ただ、中国のクラウド市場では、依然として阿里巴巴集団(アリババグループ)が支配的な立場。テンセントとしては、アリババの牙城を崩してシェアを拡大すために、パートナーの力は不可欠となっている。

 謝副総裁は、共同ソリューションの開発やトレーニング、資本のサポートなどを通じて「さらに多くの共同ソリューションを立ち上げることができればと願ってる」と呼びかけ、18年に20%だったパートナーとの共同業務の割合を、21年に50%まで引き上げる目標も示した。

膨大なデータの活用が魅力

 日系ITベンダーの中では、日立製作所グループが18年にIoTの分野でテンセントと協力する覚書を結んでいる。今回のイベントでは、顔認証でエレベーターを制御するビル管理システムなどを展示エリアで紹介した。
 
日立グループが展示したビル管理システム

 日立の担当者は「テンセントがもつ巨大なデータプラットフォームとわれわれの製品を組み合わせることで、新しい価値が創出できる」とテンセントと手を組むメリットを説明した。

 テンセントは、10億人のユーザーを抱えるSNSアプリ「WeChat」(ウィーチャット)を中心に、インターネット広告やモバイル決済などのサービスを提供してきた。パートナーにとって、テンセントが構築したプラットフォームを利用し、膨大なデータが活用できる点は魅力になっており、これはテンセントがクラウド事業を成長させていくうえで大きな武器になりそうだ。
 
テンセント・グローバル・デジタルエコシステム・サミット会場