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日本企業の知見を中国のごみ分別に活用

2019/08/22 12:30

【上海発】中国浙江省紹興市の一部地域で、日本の企業が提供するチャットボットが、住民のごみの分別を支援している。既存事業の知見を生かした新規事業としてスタートし、地元政府の公式ツールとして認められた。すでに他都市への展開も進めており、中国市場で新たなビジネスチャンスを模索する方針だ。(上海支局 齋藤秀平)

 開発したのは、民生用/産業用のマニュアルやドキュメントの制作などを手掛けるYAMAGATA INTECH(東京)の中国法人が2018年11月設立した紹興山形科技(紹興市)。多くの人に分かりやすい文章で伝えることを追求してきた経験を別の事業に転用することを検討し、新たな事業としてチャットボットに着目した。
ごみ分別チャットボットの画面

 当初はコールセンターや社内のヘルプデスクとしての導入を想定していたが、ごみの分別が中国全土に広がる見通しとなったため、19年4月からごみ分別用チャットボットの開発を進め、以前からつながりがあった紹興市政府に活用を打診。同年7月から、約10万人が暮らす同市越城区のなかの一部地域での活用が決まった。現在、住民への説明会や小学校での出前授業を実施し、同市全域への導入を目指している。
紹興山形科技の永田功総経理(右)と山形興平董事

 同市に提供したチャットボットは、SNSアプリ「WeChat」(ウィーチャット)のミニプログラムとして動作する。文字や画像、音声を人工知能(AI)が98~99%の精度で識別し、文字や音声の読み上げで分類項目を教えてくれる。マニュアルやドキュメントの制作で培った平易で簡潔な文章で説明を書いたり、「よくある質問」を設けたりしているのが特徴だ。

 紹興山形科技は現在、19年7月から「生活ごみ管理条例」が施行された上海市を対象に、外国人向けのごみ分別チャットボット(英語版)を提供し、広告で収入を得ることを計画している。25年までにごみの分別が始まる他都市に利用を広げることも目指す。日本では、チャットボットを訪日中国人観光客用のガイドツールとして営業を始めている。

 同社の永田功総経理と山形興平董事は「グローバルに展開しつつ、一つ一つはローカルに提供することを会社として目指している。ウィーチャットという中国のインフラのようなアプリ上でチャットボットを提供できたことは、われわれの強みが生かせた結果だ。今後もこの流れで各都市に合った製品やサービスを投入していきたい」と意気込んでいる。
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