日本社会全体にデジタル化の波が押し寄せている。小売業もまた、デジタル化による進化が求められている。しかし、何から手を付け、どこを目指せばいいのか。米イリノイ州に本社を構え、バーコードスキャナやRFIDリーダーなどを生かしたリテールテックに強いゼブラ・テクノロジーズが実施した調査に、小売業のデジタルトランスフォーメーション(DX)のヒントを求めた。

小売店のDXはネットオーダーやネット通販への対応で進むと語るゼブラ・テクノロジーズ・ジャパンの古川正知社長

 「消費者と小売業の双方にとって最も不幸なのは在庫切れ」と語るのは、ゼブラ・テクノロジーズの日本法人、ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパンの古川正知社長。40歳未満のミレニアム世代では、75%が品切れが原因で何も買わずに店を去ったことがあるという。世界17カ国・6346人を対象に同社が2019年に実施した「第12回 小売業のテクノロジー改革に関するグローバル調査」によるものだ。実は小売業の側でも76%がリアルタイムで在庫の可視化が課題と答えている。「小売業にとって、在庫のリアルタイム把握は簡単そうで実は難しい課題。しかし、これができるようになれば可能性が広がる」(古川社長)という。

 例えば、その店舗に在庫がなくても、近くの系列店や物流倉庫にあるかもしれない。あるいは工場からすぐ出荷できる状態なのかもしれない。さまざまなポイントに広がる在庫をリアルタイムに把握できれば、小売店の機会損失は減り、店舗を訪れた消費者の満足度は高まることになる。しっかりとした在庫の把握は古くて新しい課題なのだ。小売業の対応として、調査では、ケースなどでのRFID管理(85%)や、自動在庫確認システム(79%)や自動在庫切れアラート(76%)などをすでに提供、あるいは21年までに提供を予定しているという。

 小売業がDXを進めるにあたって、何から手を付けるべきか。古川社長は「まずはネットオーダーへの対応だ」と話す。「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store=オンラインで注文し店舗で受け取る)」という購買パターンが広がりつつあるが、調査ではインターネット経由の注文に対応する店舗はまだ40%に過ぎない。一方、54%の消費者は、スマホなどで注文ができるモバイルオーダーの導入に期待を寄せている」と語った。ここをクリアするためにもデジタル化を進めざるを得ない。ネット通販も同様だ。独自にネットショップを開くにはハードルは高いが、アマゾンや楽天のようなモールに出店することで、大きな一歩を踏み出せるわけだ。
 

 インターネット経由の注文に対応する店舗はまだ40%にとどまる。一方、54%の消費者は、スマホなどで注文ができるモバイルオーダーの導入に期待を寄せている(「第12回 小売業のテクノロジー改革に関するグローバル調査」:2019年 ゼブラ・テクノロジーズ)。

 ネット通販を運営すると、販売チャネルが広がり、消費者にとっての利便性が高まる。小売業にとっても、デジタルデータに基づいた商流と物流が発生することで、受発注管理や在庫のリアルタイム把握を手始めに店舗運営のデジタル化が自然に進んでいくことになる。DXが回り出すわけだ。前述の在庫管理システムなども、ネット通販を行うにあたって必須のものになる。顧客が買おうとする製品の在庫の有り無しが分からなければ、ネット通販は成立しづらい。自然と整備せざるを得なくなる。当然、リアルショップの効率化にもつながる。例えば、プライスカードを電子棚札に切り替えると、ネットショップと同じように価格を一斉に変更することもでき、省力化につながる。セルフレジも同様で、スムースに導入することができるだろう。

 古川社長は「ゼブラ・テクノロジーズは、バーコードスキャナやRFIDリーダーなどでは世界トップシェア。日本でのシェアはこれからだが、世界的な知見を生かし、小売業のデジタル化を支援しながら、ともに成長していきたい」と話す。新型コロナウイルス感染症の影響が続いている最中ではあるが、今こそ、多様な購買形態に対応しつつ、次の時代を見据えた小売業のデジタル戦略を確立するときが訪れているといえるだろう。(BCN・道越一郎)