シスコシステムズ(シスコ)は11月4日、2022年度(21年8月~22年7月)の事業戦略を発表した。これまで重点戦略としてきた「日本企業のデジタル変革(DX)」「日本社会のデジタイゼーション」「営業/サービスモデル変革」「パートナーとの価値共創」と四つの取り組みを「3カ年成長戦略」としてさらに強化する方針を示した。中川いち朗社長は「日本法人の売上高を米国本社除く各国法人の中でナンバーワンに成長させる」と目標を語った。
中川いち朗社長
記者説明会の冒頭ではビジネスモデルの変化について説明した。同社は17年度にスイッチやルータなどのハードウェア中心のビジネスモデルからソフトウェアやサービス提供をメインとしたビジネスモデルの転換を目指すことを発表。その結果、21年度のグローバルの総売上高に占めるソフトウェア・サービスの割合が53%になったことを明らかにした。中川社長は「日本でも同様のビジネス変革が進んでいる」と述べた。
今回、3カ年成長戦略とした四項目は、1月に中川社長が社長就任時に打ち出した重点戦略。3カ年計画に発展させることについては「ビジネスを進める中で正しい方向に向かっていると確信を持てた。シスコのグローバル戦略の基づきながら、日本法人の現場の声や国内市場の状況を反映した内容だ」とした。
まず、日本企業のデジタル変革では業界に特化したソリューションの提供に注力する。具体的には、製造、金融、流通、公共を重点業界として、専門チームを立ち上げアプローチを強化していく。
日本社会のデジタイゼーションでは、「カントリーデジタイゼーションアクセラレーション(CDA)」の取り組みを強化する。CDAは社会課題の解決や経済的な成長など目的に、政府機関や企業、組織と連携してデジタル技術を活用する取り組み。これまでは、GIGAスクールやスマートシティを対象としてきたが、今年度はこれらに加えてカーボンニュートラルなどの持続的社会や社会インフラなどにも対象を拡大するとしている。
営業/サービスモデル変革では、カスタマーエクスペリエンスの向上を目的にITライフサイクル運用支援サービスの拡充を図る。「導入はスタートであり、利活用に価値を提供することが重要だ。お客様自身が運用する、またはシスコやパートナー企業が運用を請け負うなど、柔軟なオファリングを現在開発中だ」(中川社長)という。
パートナーとの価値創造では、マネージドサービスパートナーの開拓を加速させる。シスコでは、20年度にサービスプロバイダーとのマネージドサービスを開発する専任チームを発足、過去2年でビジネス規模を2倍に成長させたという。今年度はこのチームをパートナー事業に移管し、新たにマネージドサービスプロバイダーチームとして再編、拡大させることでパートナービジネスのさらなる成長を見込む。
そして、戦略を支えるのが「変化に即応できるプラットフォーム」だとして、「Cisco Digital Network Architecture(DNA)」を紹介した。DNAでは、マルチアクセスやゼロトラストなどを実現するための機能を提供するという。そのほか、注力ソリューションとして「Cisco Webex」や「Cisco SASE」などを挙げた。
現在、シスコは170カ国で事業を展開しているが、日本法人の売上高は英国、ドイツに次いで3番目(米国本社を除く)だという。「日本は世界3位の経済大国だがデジタル競争力は低い。それは、まだまだ伸びしろがあるということだ。日本のデジタル競争力を高め日本を変えていくことで、日本法人の規模の拡大につなげる」(中川社長)と語った。
中川社長は「今までのネットワークやインフラの会社から、企業のビジネスや社会を変える会社に、そして素晴らしい未来への懸け橋となる会社にしたい」と抱負を述べた。(岩田晃久)