OKIは7月に稼働する本庄工場(埼玉県本庄市)新棟を中核として、工場発の共創イノベーションや顧客接点を強化し、顧客の課題に踏み込んで解決する能力の強化に乗り出す。ITソリューションの開発手法を工場のものづくりに応用するもので、メーカーであるOKIならではの課題解決につなげる。坪井正志・専務執行役員デジタル責任者は、「これまで門外不出だった工場のノウハウを活用して新しい価値を創り出す」と話す。
坪井正志 専務
例えば、プロジェクションマッピングの技術を用いて、製品ごとの組立手順を画像や映像で示すことで生産効率を高める仕組みを横展開したり、近年活用が進んでいる警備や清掃などを行うサービスロボットを制御する領域で、建設現場や施設管理のユーザー企業と共創しながら、最適な制御方法を導き出す(写真参照)。
作業台に作業手順を投影するプロジェクションマッピング
複数のサービスロボットを制御する装置の試作品
OKIの製造現場のノウハウは、そのままでは必ずしも顧客の求めているものに合致しないため、顧客の課題を聞き込んで、実証実験を行いながら課題の解決につなげるITソリューションのアジャイル的な開発手法を活用する。
ITソリューションでは、端末領域に強いOKIの技術力をベースに、さまざまな共創パートナーとAIを活用したIoT事業である「AIエッジ戦略」を推進し、成功を収めている。この手法を「工場にも応用することでOKIグループ全体の価値創造や市場競争力の向上につなげていく」(藤原雄彦・執行役員イノベーション責任者兼技術責任者)考え(図参照)。
直近の売上高構成比で見ると、比較的新しいAIエッジの領域は全体の2割程度に過ぎず、残り8割を製品製造が占める。製品製造ではこれまでは顧客が決めた仕様の通りに受託製造するケースが多かったが、今後は顧客との共創をベースとした割合を増やしていく。坪井専務は「顧客とのオープンな共創を通じてアジャイル的なものづくりに挑戦する」と語る。
(安藤章司)