自動翻訳ツールなどを提供する八楽は8月23日の記者発表会で、自動翻訳の状況を説明し、翻訳されたテキストをチェックするプロセスが確立されていないことを課題として挙げた。坂西優・代表取締役は「今後、自動翻訳をそのまま使うのではなく、どうやって使い、修正していくかがユーザーや業界の課題になっていく」と語った。
坂西 優 代表取締役
同社のチーフ・エバンジェリストで、立教大学異文化コミュニケーション学部の山田優・教授は、公共機関において不適切な直訳がそのまま使用され問題となった事例を挙げ、最終的なチェックの際に人の関与は不可欠と指摘。「自動翻訳を使うユーザーのリテラシーを高めていく必要がある」と語った。山田教授が理事を務めるアジア太平洋機械翻訳協会は、自動翻訳に関するユーザーガイドを8月末頃に公開する予定。加えて、ユーザーが翻訳に対して感じる満足度は、意味の正確性だけでなく、文体や適切な用語が使われているかなどにも依存するとした上で、自動翻訳においても訳文の品質を考える際には正確性だけではない評価軸を設定し、訳文を検証していく必要があるとした。
そのほか、技術動向について、山田教授は特殊な用途や業界に特化した翻訳エンジンの開発が今後あり得るとした上で、「目的に特化したエンジンが開発され、ユーザーはそこから選択するようになる」と語った。
また、市場動向については、八楽が20~60代の語学に興味がある360人を対象に行ったアンケート調査によれば、新型コロナウイルスの感染拡大前に比べて、外国語を使用する機会が増えたとする回答者は約42%で、コロナ禍で浸透したチャットで外国語を使う機会が増えたとする回答者は約47%だった。また、約42%が業務の中で自動翻訳を活用する機会が増えていると回答した。坂西代表取締役は、市場は伸びているとの認識を示した。
(大畑直悠)