NTT東日本は、自社のクラウド電話とシスコシステムズの「Webex」の一体化を一段と加速させる。NTT東日本のクラウド電話サービス「ひかりクラウド電話」とWebex対応のオフィスなどで使う固定電話端末(ビジネスフォン)をセットにして、主に中堅・中小企業ユーザー向けに10月31日から販売する。Webexは、「Zoom」や「Teams」と同様のビデオ会議アプリとの印象が強いが、シスコ製のビジネスフォンと接続することで、既存の電話の使い勝手を残したまま、スマートフォンやPCで会社の固定電話番号を使ったクラウド電話の発着信が可能になる。
(安藤章司)
NTT東日本のひかりクラウド電話は、マイクロソフトの「Teams」、シスコのWebexを使い「東京03」などから始まる固定電話の電話番号で発着信ができるサービス。コロナ禍で一気に進んだリモートワークによって、普段使っているTeamsやWebexなどのビデオ会議ツールから「会社の電話番号で外線発着信がしたい」とのニーズに応えたものだ。
Webex対応ビジネスフォン
NTT東日本 長谷部周彦 副本部長
今回はより踏み込んで会社のビジネスフォンとWebexを連携させることでクラウド電話へ移行する抵抗感を解消。主な顧客ターゲットである中堅・中小企業の音声コミュニケーション分野における「働き方改革や課題解決につなげる」と、NTT東日本の長谷部周彦・ビジネス開発本部副本部長は話す。
シスコシステムズ 中川いち朗 社長
クラウド電話の課題は、スマホやPCで使うことを前提にしているサービスが多く、ビジネスフォンとの連携が十分に進んでいない点が挙げられる。また、クラウド電話用のアプリの多くは個人所有のスマホにインストールするBYOD(個人端末の業務利用)を想定しておらず、「会社支給のスマホを使わざるを得ないケースが多い」(シスコシステムズの中川いち朗社長)ことも課題だった。WebexであればBYODで運用しても一定水準のセキュリティが保たれ、個人所有と会社支給の端末を何台も持ち歩く負担が軽減される。Wi-Fi対応のビジネスフォンを選択すれば、LANケーブルや電話線の配線も必要なくなり、「オフィスのフリーアドレス化やレイアウト変更の配線し直しの手間もなくなる」(NTT東日本の高橋立典・ビジネス開発本部第一部門長)。
NTT東日本 高橋立典 部門長
NTT東日本では、Webexのライセンス販売から対応ビジネスフォンの設置に至るまで、マネージドサービスとしてワンストップで提供する体制を構築。Webex関連商材のビジネスパートナーは全国に数百社あるが、これだけの規模でマネージドサービスを展開するのはNTT東日本が初めてだとしている。
シスコシステムズ 石黒圭祐 執行役員
現時点ではNTT東日本の担当地域のみだが、「西日本地域でも同様の取り組みを広げていきたい」(シスコシステムズの石黒圭祐・執行役員SMB・デジタル事業統括)と、NTT西日本との協業推進にも意欲を示す。NTT東日本は販売目標を開示していないが、参考値として音声通話の発着信が可能な「Webex Calling」のユーザー数は全世界で600万人余り、関連売り上げは前年比2倍で推移しているという。