富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)は、マイクロソフトのERP「Dynamics 365」を軸としたビジネスでオーストラリア(豪州)市場への進出を加速させる。従業員数約200人の現地の中堅SIerであるマイクロチャネルサービシーズ(マイクロチャネル)を3月1日付でグループに迎え入れ、社名を富士フイルムマイクロチャネルサービシーズに変更。中堅・中小企業を中心にビジネスの拡大を目指す。ERP事業で本格的に海外へ進出するのは初めて。
オーストラリアでは、複合機の販売やマネージドプリントサービス、ITアウトソーシングなどを手がける富士フイルムグループの現地法人が進出しており、直近のオセアニア地区の売り上げは約900億円規模。今後はERPの販売や構築が現地でのビジネスに加わる。ERPビジネスでは、マイクロチャネルが強みとする年商500億円以下の中堅・中小企業ユーザーに焦点を当てる。
浜直樹社長・CEO(左)と井上あまね・執行役員
富士フイルムBIは「Dynamics 365を軸に国内外でERPビジネスを伸ばす」(浜直樹社長・CEO)戦略を打ち出しており、国内ではSIerの富士フイルムデジタルソリューションズ(旧HOYAデジタルソリューションズ)をグループ化するなどして体制強化を進めてきた。
マイクロチャネルは、ニュージーランドやシンガポールにも進出して約1200社の顧客を持っており、井上あまね・執行役員アドバンスドインダストリアルサービス事業本部長は「既存の顧客基盤と富士フイルムグループの既存拠点を活用してクロスセルを推進していく」と話す。マイクロチャネルの年商は約5700万オーストラリアドル(約52億円)とSIerとしては小振りであるものの、流通や製造の業種顧客を中心に優良顧客を多数持ち、「中堅・中小企業ユーザー市場での存在感は大きいものがある」という。
富士フイルムBIは、ERP導入を業務改革の一環として位置づけ、できる限りカスタマイズしない方向性を打ち出している。カスタマイズがなじまないSaaS方式の業務アプリが普及し、限られた予算の中で安く速くERPを導入したい中堅・中小企業のニーズに応えるには「ERPの標準業務フローにできるだけ業務を合わせるアプローチが有効」(井上執行役員)とみる。こうした考え方は、欧米型の市場では比較的受け入れられられているとされ、マイクロチャネルが持つERP導入のノウハウを吸収し、国内やほかの海外地域への横展開を進めてERPビジネスを加速させる。
今回のM&Aを機に、ITソリューションやITアウトソーシング、マネージドサービスをまとめたビジネスソリューション事業について、国内外での売り上げを向こう5年で現在の約2600億円から4000億円規模に伸ばしていく方針。
(安藤章司)