米Pure Storage(ピュア・ストレージ)は6月14日から16日までの3日間(米国時間)、米ラスベガスで年次カンファレンス「Pure//Accelerate 2023」を開催した。オールフラッシュストレージ「FlashArray」シリーズの新モデルおよび新ファミリーの追加、ストレージサブスクリプションモデル「Evergreen//One」におけるランサムウェアリカバリーのSLA(サービスレベル契約)などを発表し、オールフラッシュストレージ市場での優位性をさらに強固にしていく構えを見せた。
「R4」プラットフォームは最新のハードウェアで構成され、
40%の性能向上を実現
基調講演に登壇したチャールズ・ジャンカルロCEOは「2028年までにはHDDが市場からなくなっているだろう。創業時からオールフラッシュだけにフォーカスしてきたピュア・ストレージは、5年後には競合を寄せ付けないレベルに到達できると信じている」と語り、ストレージ市場の幅広い領域において、同社のオールフラッシュ製品は他社のHDD搭載製品に対し高い競争力を示していると主張した。
基調講演に登壇したチャールズ・ジャンカルロCEO
主力シリーズにより高性能な新モデルの「R4」を追加
今回のPure//Accelerateでの一つめの発表は、OracleデータベースなどTier 1のミッションクリティカルなワークロードに最適化された「FlashArray//X」シリーズと、ビジネスクリティカルなTier 2ワークロードに最適化された、最大9.8ペタバイトまでサポートする「FlashArray//C」シリーズに、追加コストなしで性能を40%向上させた「FlashArrayX R4」「FlashArray//C R4」を追加したことだ。いずれも、「Sapphire Rapids」と呼ばれる米Intel(インテル)製の最新世代のCPUを搭載しており、PCI Express 4.0やDDR5メモリの採用など、ハードウェアの強化で大幅な性能向上を実現した。
低コスト機種も拡充しHDDからの移行を促進
次に、製品名の末尾に「E」が付く、容量あたりのコストを抑えたモデルで、新シリーズとなる「FlashArray//E」を発表した。今年3月に発表した、非構造化データに特化したブレード型製品の「FlashBlade//E」とともに「Pure//E」ファミリーを構成し、増え続けるデータの格納をスケールしやすいサイズと経済性でサポートする。FlashArray//Eは1ペタバイトからスケールできるコストパフォーマンスに優れたファイル/ブロックストレージで、これまでコストが主な要因でHDDからオールフラッシュにシフトできなかったデータをターゲットにする。ピュア・ストレージの既存顧客は、同社のサブスクリプションモデル「Evergreen//One」を通してFlashArray//Eの導入が可能だ。
ランサムウェア被害の発生時、翌営業日までに代替製品を出荷
「ハードウェアではなくSLAに基づいてストレージを提供する」というユニークなコンセプトで提供されているサブスクリプションモデルのEvergreen//Oneに、六つめのSLAとして「ランサムウェアリカバリー」を追加した。既存のEvergreen//Oneユーザーであればアドオンで利用が可能。ランサムウェア被害からの早期の回復を実現するため、被害の翌営業日までのクリーンなストレージアレイの出荷、48時間以内の復旧計画の決定、8TiB/時間のデータ転送速度を保証する。また、ピュア・ストレージのエンジニアによるオンサイトのリカバリーサービスや、テクニカルサービスを通じた常時サポートもバンドルされている。
基調講演では、NTTグループでグローバルのデータセンターおよびネットワーク事業を展開する英NTTリミテッドから、スコット・マックアイザック・グローバルオペレーション部門シニアバイスプレジデントが登壇。同社が提供するマネージドサービスで、9年間にわたってFlashArray//CやFlashBladeシリーズを活用している事例を紹介した。Evergreen//Oneによるサブスクリプションサービスを利用しているため、コントローラーのアップグレードなどがあってもサービスを止める必要がなく、1日あたり10テラバイト・30億ビリオンレコードに達する膨大なデータを扱うにあたっても、ハイパフォーマンスで容易にスケールできる点などを高く評価していた。
「当社のデータセンターをオレンジ
(ピュア・ストレージのコーポレートカラー)一色にしたい」と語り、
オールフラッシュ製品を高く評価するNTTリミテッドの
スコット・マックアイザック・シニアバイスプレジデント
また、年間を通して優れた実績を挙げたパートナーを表彰する「Pure Storage Global Partner Forum」では、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)がアジア太平洋地域の「APJPartner of the Year」を獲得した。この受賞について日本法人ピュア・ストレージ・ジャパンの田中良幸社長は「日本の顧客のニーズと、ピュア・ストレージをよく知り尽くしているCTCがAPJ Partner of the Yearに選出されたことは本当に嬉しい。日本でもオールフラッシュが確実に普及していることを示す受賞であり、非常に感謝している。今後も一緒に日本企業のイノベーションを支えていきたい」とコメントし、あらためて国内ストレージ市場でのシェア拡大に意欲を見せた。
Pure//Accelerate 2023については、あらためて詳細にレポートする予定。
(五味明子)