米Oracle(オラクル)は、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)のエンタープライズ向け生成AIサービス「OCI Generative AI」の一般提供を開始した。カナダのCohere(コヒア)、米Meta(メタ)の大規模言語モデル(LLM)が選択可能で、ユーザーは、APIを通じて独自のアプリケーションにLLMを統合できる。合わせて、外部リソースを使って回答精度を高めるRAG技術(検索拡張生成)を搭載したAIエージェント「OCI Generative AI Agents」のベータ版も発表。企業内のナレッジベースを基にした自然言語での質問・回答を実現する。生成AIサービスの競争が加速する中、オラクルはインフラからアプリケーションまで多岐にわたるレイヤーでAIを提供できる点などを訴求したい考えだ。
(藤岡 堯)
ヴィノード・マムタニ バイスプレジデント
1月24日に日本の報道向けの説明会が開かれ、オラクルのヴィノード・マムタニ・AIプラットフォーム/Generative AI Service担当バイスプレジデントらが概要を解説した。
OCI Generative AIは事前トレーニング済みの基盤モデルを利用し、顧客向けサービス、マーケティング、セールスなど、さまざまなユースケースに対応する。パブリッククラウド環境のほか、「OCI Dedicated Region」を通じてオンプレミス環境にあるデータ、アプリにも対応する。基盤モデルをそのまま使う以外に、ユーザー独自のデータセットを使ったファインチューニングによるカスタムモデルの構築も可能となっている。
現時点でコヒアのテキスト生成モデル「Command(52Bと6Bの2サイズ)」、要約モデルの「Summarize」、データをベクトル変換するモデル「Embed」、メタのテキスト生成モデル「Llama-2 70B」を用意する。モデルは今後も追加される予定で、半年後をめどにLlama-2の軽量モデルである7Bもラインアップに加わる見通しだ。
OCI Generative AI Agentsは、企業のナレッジベースに保管された文書などをLLMが参照し、回答の精度を高める。デフォルトではOCI Generative AIのLLMが使用され、ユーザーは独自のモデルを持ち込む必要はない。公開段階では企業内検索エンジンの「OCI OpenSearch」をサポートし、2024年の上半期内にはベクトルデータに対応した「Oracle Database 23c AI Vector Search」と「MySQL HeatWave Vector Store」も対象となる予定だ。今後は情報検索タスクだけでなく、ユーザーのプロンプトによってAPIを呼び出し、ワークフローを自動化するといった具体的なアクションを実行できるエージェントも投入される見通し。
機械学習用プラットフォームである「OCI Data Science」を機能拡張した「AI Quick Actions for OCI Data Science」のベータ版も紹介された。オープンソースのLLMにアクセスし、ノーコードでデプロイやファインチューニングなどが行える。
説明会ではオラクルのAIサービスにおける強みについても触れられた。競合との違いとして、マムタニ・バイスプレジデントは、▽エンタープライズのユースケースを想定した効果的でカスタマイズ可能なモデル▽テクノロジースタックのあらゆる層にまたがって組み込まれた機能・サービス▽データ管理、セキュリティ、ガバナンスの重視─の3点を挙げた。特に多様なレイヤーへの組み込みに関しては、ユーザーにはAI利用のためにデータを移動させたくないとの思いがあるとして「データのある場所にAIを導入している」と強調。さらに「どのレイヤーでも提供できること、あらゆるアプリケーションと連携させることを重視している。これらを通じてエンタープライズの顧客が円滑に生成AIを使えるようにしたい」と述べた。