サイボウズは2月27日、2023年12月期決算・事業説明会をオンラインで開催し、連結の売上高が前期比15.2%増の254億3200万円、営業利益が約5.5倍の33億9400万円で、いずれも過去最高となったことなどを報告した。ノーコードツール「kintone」を中心にクラウド製品が引き続き好調で、広告宣伝費の抑制が大幅増益につながった。一方、青野慶久社長はARR(年間経常収益)の成長率(前年比増加率)が低下傾向にあると紹介。kintoneが部門導入にとどまり、単価が伸び悩んでいるとし「部門でしか入っていないものを全社に広げていただく。これが課題だ」と強調した。
青野慶久 社長
23年12月末時点のクラウド製品全体のARRは240億1800万円、成長率は17.5%だった。成長率については、20年は26.6%、21年は24.3%、22年は22.9%と減少を続けており、23年は20%台を割り込んだ。1サブドメインあたりの平均売り上げを指すARPAを製品別でみると、全社基盤が前提となる「Garoon」が11万6700円であるのに対し、売り上げの半数以上を占めるkintoneは3万4100円となっている。
今後の対策として、kintoneで扱える業務や情報の幅を拡張するとし、24年中にメール共有オプションを追加する方針を示した。24年夏には大人数全社導入企業向けの専用ライセンスの販売も開始する予定だ。専用ライセンスは価格面だけでなく、作成できるアプリケーションの上限拡大や、専用プラグインの設定などのメリットがある。
同社では25年までの全社スローガン「25BT」(2025 and go Beyond with Trust)を掲げて投資を進めている。青野社長は「25年から力強い成長ができるよう頑張りたい。(同社のクラウド製品を)全社のDX基盤、情報共有基盤にしていただくことは一番大きな動きになる」と話した。
パートナーによる国内クラウド売上高は、前期比21.9%増の134億1000万円に上った。パートナー販売の売上高比率は62.9%となり、前期の61.6%をわずかに上回った。同社はパートナー同士の関係深化に資するイベントなどを通じて、パートナーエコシステムの強化を図る考えだ。このほか、地銀との協業、AI関連を含めた周辺ソリューションを開発するパートナーの拡充、ユーザーのパートナー化も加速させるとした。
海外でもパートナー展開を重視する方向で、米国、中南米ではリコーと、東南アジアでは富士フイルムビジネスイノベーションと連携し、市場開拓に取り組む。
(藤岡 堯)