【米ラスベガス発】米Oracle(オラクル)はマルチクラウド路線をさらに加速させる。米国時間の9月10日、米ラスベガスで開幕したオラクルのプライベートカンファレンス「Oracle CloudWorld 2024」に合わせ、米Amazon Web Servises(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)との戦略的パートナーシップと、「Oracle Database@AWS」の展開を発表した。オラクルはすでに米Google(グーグル)のGoogle Cloud、米Microsoft(マイクロソフト)と同様な協業に乗り出しており、オラクルと各社のテクノロジー、サービスを組み合わせ、顧客に新たなクラウド体験を提供する構えだ。
「Multi Cloud Era」の始まりが強調された
「Oracle CloudWorld 2024」
基調講演に臨んだオラクルのラリー・エリソン会長兼CTOは、協業が「Open Multi Cloud Era」(開かれたマルチクラウドの時代)の始まりにつながると強調。「クラウドはオープンになりつつあり、もはや壁に囲まれた庭(クローズドなプラットフォーム)ではなく、顧客は選択肢として複数のクラウドを共に使うことができ、異なるクラウドサービスが華麗に連携する」と訴えた。
ラリー・エリソン
会長兼CTO
AWSとの提携で提供するOracle Database@AWSでは、AWS内に設けた専用インフラストラクチャーの上で、「Autonomous Database」と「Exadata Database Service」を展開する。ユーザーはAWS上の「Oracle Database」(Oracle DB)とAWSアプリケーションの間で、低遅延のネットワーク接続を利用できるようになる。
さらに、Oracle DBとAWS Analyticsサービス間のゼロETL統合、「Amazon S3」とのシームレスな統合によるデータベースのバックアップ、リストアの簡素化といったメリットも得られるとする。「AWS Marketplace」から調達でき、既存のオラクル・ライセンスの持ち込みにも対応する。年内にプレビュー版が提供され、2025年には顧客のニーズに合わせて新しいリージョンに拡大する計画だ。
基調講演にはAWSのマット・ガーマンCEOも登壇。ガーマンCEOは、AWSのスケーラビリティーやセキュリティーを気に入っているAWSユーザーでも、ミッションクリティカルなワークロードはオラクルのソリューション上で走らせているケースがあると紹介。一方で、こうした顧客はミッションクリティカルなワークロードをアプリケーションのあるAWS内で稼働させたいとも考えており、そのためにはデータベースへの低レイテンシー接続が重要になるとした。
今回の協業でそれが実現するとし「私たちは非常にわくわくしている。顧客が何を求めているのか、その声に真摯に耳を傾けることで、優れた製品を提供できる」と語り、協業は顧客の強いニーズに支えられていることを示した。
オラクルはAWSに先駆けて、「Oracle Database@Azure」をすでに展開し、24年9月9日(米国時間)には「Oracle Database@Google Cloud」を米国と欧州の計4リージョンで一般提供を開始しており、業界トップであるAWSとの協業発表によって、オラクルのマルチクラウド戦略はより強化されたかたちとなる。
CloudWorld 2024は12日(米国時間)までの日程で、11日の基調講演にはオラクルと戦略的協業に取り組む富士通の古賀一司・執行役員SEVPシステムプラットフォームらが登壇した。(藤岡 堯)