サードウェーブは11月8、9日の両日、「AIフェスティバル2024」を東京都内で開催した。基調講演にはメディアアーティストの落合陽一氏が登場し、生成AIの進化の過程を振り返りながら、AIがあらゆるものを生成できるようになるという、未来における人間のあり方について語った。
サードウェーブのイベント
「AIフェスティバル2024」
8日の基調講演で落合氏は、「そして神社を作る」というタイトルで講演した。落合氏は、生成AIが登場してから数年で急速な進化を遂げた過程を振り返り、「生成AIを使うようになった当初は、4年で問題が顕在化し、性能進化によって7年でその問題は消滅すると考えていたが、進化が早く、問題の消滅までの期間が5年か6年に短くなっている」と指摘。生成AIの性能向上の例として、3分の曲を生成AIが作曲するのに30秒しかかからないことを挙げ、「実時間より早くコンテンツができるようになると、人間に求められるのはどれがいいかを選ぶ『キュレーション』に限られてくる。人間はほぼDJ的な存在になり、生成されたものをどう組み合わせるかという問題を解いていくことになる」と展望した。
メディアアーティストの
落合陽一氏
また、2025年に開催が予定されている大阪・関西万博で、「null2(ヌルヌル)」というタイトルのパビリオンをプロデュースしていることを紹介。鏡を使ったパビリオンの内部や、自身を3Dモデルで再現したデジタルヒューマンが話をするコンテンツを示し、「あらゆる人がデジタルヒューマンを保有する時代が、万博が開催される25年には実現するだろう」との見方を示した。
その上で、「ポイントとなるのは、人間の死生観が大きく変わることだ」と指摘。人間がデジタル化され、死後もインターネット上で生き続ける世界で、「人類はおそらく向こう10年ほどで、『生きているのと死んでいるのはどういう区別があるのか』という考えに突入するだろう」。死生観の変化で信仰の対象が曖昧になるとの見通しを示し「人間とデータが一体になったら、考えたいのは宗教のことだ」と説明。自身が神社で禰宜(ねぎ)になって神事を経験したことに触れ、「AIがあるのが自然になったときに、どうカルチャーにフィットしていくかに興味がある」と述べた。
同イベントは昨年に続いて2回目。有識者が生成AIの現状について討論したほか、AIで生成したアートを表彰するグランプリなども開催した。
(堀 茜)