Dynabookは3月10日、都内でソリューション事業戦略発表会を開き、今春に法人市場で投入するXRグラス「dynaEdge XR1」やAI技術を中心に新たな価値を提供し、顧客の業務変革に貢献する方針を示した。XR1のビジネスについては、付随するソリューションと合わせた展開を重視し、パートナーとの共創でユースケースの拡大や市場開拓を図る考えで、2025年中に1000台の販売を目標としている。
(藤岡 堯)
XR1は同日に受注を開始した。現実空間が視認できる透過型で、眼鏡のように2枚のレンズを備え、双方に情報を表示できる両眼式となる。Dynabookはこれまでにも、単眼式の眼鏡型ウェアラブルデバイスを提供してきたが、表示できる情報の多い両眼式を求めるニーズが強いことから、XR1を開発した。
今春に市場投入するXRグラス「dynaEdge XR1」とコントローラーの「dynaEdge C1」。
XR1は視力補正用レンズを着用するためのフレームも備える
XR1とアプリケーションをインストールしたPCを接続し、仮想デスクトップを最大3画面まで表示できる。コントローラー端末「dynaEdge C1」を併用すると、専用のクラウドサービスを通じてAIを活用した各種機能が利用可能となる。カメラ、マイクを通じて画像や音声を認識し、文書の要約や翻訳、会話ログや翻訳字幕の表示、現在の会話を円滑に進めるためのヒントの提示などのアシストが受けられる。
間接販売の実施は検討中としているが、ビジネスモデルとしてはXR1単体での拡販よりも、XR1で利用するソリューションとのセットで訴求を図りたいとする。発表会では、パートナー3社がXR1と組み合わせるソリューションを紹介。パーソルクロステクノロジーはAIアシスタントでの業務支援、エピソテックは動画マニュアルの表示による現場作業の改善、東芝システムテクノロジーは倉庫内などでのピッキング作業の効率化といったように、各社の独自サービスとのシナジーで成長を目指す構えだ。
すでにXR1における「ビジネス共創パートナープログラム」を開始している。パートナーのほか、XR1を使って業務効率化や生産性向上を進めたいユーザー企業の参加も募っている。執行役員の熊谷明・ソリューション事業本部長は「今後、企業での生成AI導入が進んでいく中で、ワークショップなどを通じて、どのようなかたちでAIを使っていくか話し合いながら、XR1などのデバイスを(AI活用のための)一つのパーツとして提供したい」と話した。
生成AI関連では、オンプレミス環境での生成AI導入を支援するサービスも開始する。大規模言語モデルやアプ
リの開発環境、サンプルアプリなどを備たAIワークステーションと、研修プログラムをセットで提供し、伴走型で生成AIの活用を支える。当面はDynabookが納入から研修まで担うが、パートナーからは商材として扱いたいとの声も寄せられており、研修実施のノウハウ、スキルなどを蓄えた上で、パートナー経由の商流も今後検討する。
説明会ではこのほか、AIを活用したPCのライフサイクルマネジメント(LCM)高度化の取り組み、4月に予定する大阪府茨木市での「西日本LCMセンター」開設、ドライブレコーダーとAIによる安全運転支援サービスなどについても言及された。
覚道清文社長兼CEOは「今後はハードウェアのみならず、独自ソリューションで、これまで以上にお客様の価値向上に貢献するため、未来を見据えた、革新的な提案を続ける」とあいさつした。