日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は新春セミナー・賀詞交歓会の開催に合わせ、Webサイトでメーカー9社による「2025年わが社の経営方針と営業戦略」の動画を公開した。各社はビジネス変革に向けた最重要要素であるAI関連の取り組みを主軸に、それぞれが強みとする技術や領域を生かし、顧客への提供価値を最大化する方策を示した。成長にはパートナーの協力は必須となっており、さらなる連携の深化が期待される。
(文・編集/週刊BCN編集部)
レノボ・ジャパン
PCはより個人に寄り添う体験に
レノボ・ジャパンの安田稔・執行役員副社長は「AI活用がPoCから実践へと変わろうとする変化を肌で感じている」と述べ、顧客のAI活用をパートナーと共にサポートするために、投資へのコミットメント、製品やソリューションの最適化、伴走体制の強化を進めているとした。
安田副社長は「Windows 11」の先に「AI PC」の本格的普及があるとし、PCは「今まで以上に個人に寄り添ったコンピューティング体験へ進化する」と指摘した。一例として、PC内の情報を基に作業や回答を行うAIエージェント「Lenovo AI Now」を紹介。自分だけのデータベースから情報を検索したり、文章を要約したりできるという。
法人に向けては、用途や業種ごとに用意するカスタマイズ可能なスイート「AI Library」を提供し、顧客との伴走に注力する。安田副社長は「あらゆる企業や組織にAI、コンピューティングパワーの恩恵を届ける」と意気込んだ。
VAIO
「使って気持ちの良い製品」を提供
VAIOは24年に発表した新製品について紹介した。モバイルPCの「VAIO Pro PK-R」は、製品理念である「カッコイイ」「カシコイ」「ホンモノ」の三つのキーワードを盛り込んでいるとし、デスクなどに置かれた状態から片手だけで簡単に持ち上げられる点や、他社製品にはないカラーバリエーションをアピールした。軽量モバイルディスプレイの「VAIO Vision+」の特徴も解説した。山野正樹社長は「お客様の生産性が高まり、使って気持ちが良い製品を提供したい。より多くの人にVAIOを使ってもらうためには、パートナーの協力が必要不可欠」と呼び掛けた。
山野社長はこのほか、1月からノジマの傘下に加わったことについても触れ、「独立性は尊重されており、事業運営方針や顧客との関係に変更は一切ない」と説明した。また、直近は稼働販売店数を意識した活動を進め、1年でVAIOの販売店数が2倍に伸長したという。
日立製作所
業務特化型LLMの構築事例を公開
日立製作所は自社における業務特化型の大規模言語モデル(LLM)構築の取り組み事例を公開した。システム運用管理ソフト「JP1」の認定試験のうち、最上級の「JP1認定コンサルタント」の試験に合格できる水準の業務特化型LLMを構築する試みでは、認定基準である70%以上の正解率を達成。金融システム開発の設計書レビューで業務特化型LLMを構築した例では、上流工程での生成AIの効果的な活用を実現した。
OT(制御・運用技術)の分野では、ベテラン技師の頭の中だけに存在し、文書化されていないノウハウや暗黙知のデータを集め、AIの学習用データを作成する取り組みを行っている。熟練技師の知見を業務特化型LLMに学ばせ、それを分かりやすいかたちで若手に継承させる狙い。橋本進太郎・フロントエンゲージメント推進本部本部長は「ビジネスパートナーとの協業を推進し、共に成長していく」と述べ、生成AIの分野でもパートナー協業を深めるとした。
エフサステクノロジーズ
AI基盤のオンプレミス需要に着目
エフサステクノロジーズは、生成AIの活用に欠かせないIT基盤のオンプレミス需要への対応を紹介した。AIに学習させる自社データの外部流出への懸念などから、自社内にAI運用のためのGPUサーバーを設置したいとするユーザー企業の要望に応える製品ラインアップを拡充している。
例えば、発熱量が大きいGPUサーバーを効率良く冷却する水冷式は、データセンター(DC)設備から供給される冷却水と熱交換する方式が一般的だが、水冷対応の専用設備を持つ高規格のDCでしか運用できない。この課題に対し、同社では一部機種でDC側の専用設備なしで水冷式GPUサーバーを運用できるようにした。冷却水をラック内のファンで冷却する「ラック内完結型水冷方式」を採用することで、幅広いオンプレミス環境に対応できるとした。
ユーザー企業やパートナーの声を「迅速に製品に反映させていく」(坂井賢一・取締役常務)ことで競争力を高める考えだ。
Dynabook
AIをフル活用できる製品を提案
Dynabookの覚道清文社長兼CEOは、24年にPC「dynabook」が発売35周年を迎えたと紹介し「これからもさまざまに変化する時代のニーズを捉え、35年間で培ったノウハウを駆使して高品質な製品を提供し続ける」と抱負を語った。
25年の戦略について覚道社長は「市場が伸長傾向にある14型ノートPCの強化、AIをフル活用できるPCやソリューションの積極的な提案を進めていく」と説明。「Copilot」に加えて、ローカル生成チャットボット「dynabook AIアシスタント」など独自のAI機能を搭載したノートPC「dynabook X94CHANGER」やXRグラス「dynaEdge XR1」とAIを組み合わせたソリューションなどに注力する姿勢を示した。
「Windows 10」のサポート終了に伴う買い替え需要を踏まえ、「LCM運用サービス」を通じて、導入から運用保守までトータルで支援するとした。
日本HP
AI PCで新しい働き方を支援
日本HPは25年に重点的に取り組むこととして、「Future of Work」という新しい働き方の支援を挙げ、コロナ禍を経て多様化した働き方に寄り添う製品やソリューションを提供していく。岡戸伸樹社長は「AIやスマートテクノロジーによる体験で、多くの人の新しい働き方の実現を支援する」と意気込んだ。
AI PCでは法人向けラインアップを拡充し、販売を推進する方針で、独自ソリューションである「HP AI Companion」を搭載した法人向け次世代製品に注力する。岡戸社長は「25年はAI PCを大きく伸ばせる年だと思っている。パートナーの皆さんと一緒に拡販していきたい」と述べた。
25年のPC市場動向について、国内ではWindowsのマイグレーションやGIGA端末の更新といった明るい材料があることに触れ「大きな需要をパートナーの皆さんと獲得し、共に成長していきたい」と呼び掛けた。
日本ヒューレット・パッカード
AI実装をパートナーと推進
日本ヒューレット・パッカード(HPE)は、25年度のパートナー事業方針について、常務執行役員の田中泰光・パートナー・アライアンス営業統括本部長が説明した。AIのビジネス実装に向けて市場を開拓する方針で「パートナーと一緒に新しい顧客価値をつくりたい」とした。
田中常務は、同社が注力してきたハイブリッドクラウドが、エンタープライズでの生成AI導入が進む中でますます進んでいくとし、「自社データの活用のためにプライベートクラウドでAIを活用するのが現実解になる」と展望した。
製品では、仮想化管理を簡素化する新サービス「HPE VM Essentials」について「新しい選択にお客様を誘導してほしい」と呼び掛けた。サーバーやストレージでは、人気の構成をパッケージ型の商品とし価格も低く抑えた「HPE Smart Choice」が、中堅・中小企業のニーズに応える製品だとして「簡単に手離れ良く提供いただける」とアピールした。
日本マイクロソフト
パートナーと「AI時代」をつくる
日本マイクロソフトは生成AIの活用を中心に25年の注力ポイントを紹介した。
執行役員常務の浅野智・パートナー事業本部長は生成AIブランド「Copilot」、ローカル環境でのAI処理を可能とする強力なプロセッサーを備えた「Copilot+PC」などに言及した上で、25年のキーワードは「エージェント化」「マルチモーダル化」になると強調。この2点により「専門家のような知識をAIが持ち、組み合わせることで、満を持してビジネスにAIが使われる」との見方を示した。
さらに浅野常務は「生成AIをどのように事業化するかは、皆さんと一緒に考えたい」と述べ、同社が展開する「生成AI事業化支援プログラム」への参画を呼び掛けた。
他方、中堅・中小企業においてはAI利用の前提となるクラウドシフトが遅れていることから、パートナーと協力し、クラウド化を推進したい考えだ。浅野常務は「皆様と一緒にAI時代をつくっていきたい」と協力を求めた。
NEC
共創でBluStellarを発展
NECは成長事業と位置づけるビジネスモデル「BluStellar」の拡大に力を入れる。顧客のDXを実現する上での構想やシナリオ、成功事例などを体系化した「Agenda」、同社が保有する商材や技術を業界別オファリングと業界共通オファリングにまとめた「Technologies」、社内外に展開する人材育成プログラムの展開やパートナーとの協業、アライアンスの締結に取り組む「Programs」で構成。顧客の経営課題を上流から下流まで一貫して支援する。
木村哲彦・Corporate EVPは「今後は特にパートナーとの連携を重視していく」と述べ、「BluStellarをパートナーとの共創でより発展させたい。ビジネス変革を実現するための基盤として社会や顧客の課題解決をリードするバリュードライバーを目指す」と呼び掛けた。
パートナープログラムについても説明し、パートナーが持つ強みや商材をBluStellarと組み合わせて新しい市場価値の創出に取り組み、BluStellarを全国の顧客に届けることに注力するとした。