SmartHRは6月3日、2030年に向けた事業戦略を発表した。「クラウド人事給与基幹システム」への進化や、「人を生かすタレントマネジメント」の実現を戦略の柱とし、従来展開してきた人事労務SaaSの枠を超えた「人的資本経営プラットフォーム」を目指し、30年までの売上高1000億円達成を目標に据えた。芹澤雅人CEOは「私たちは社会を“well-working”にする、日本で働く上でなくてはならないインフラ的な企業になろうと考えている」と展望した。
(大向琴音)
芹澤雅人 CEO
人的資本経営プラットフォームの実現に向けて、▽クラウド人事給与基幹システムへの進化▽AIによる業務効率化と人的資本経営の推進▽HR SaaS以外の領域への進展―の三つの注力ポイントを示した。
クラウド人事給与基幹システムを目指す上では、「従業員データベースを基盤としたシームレスなデータ連携」がかぎとなる。これを実現する具体的な機能として、「給与計算機能」の提供を6月4日から開始した。「SmartHR」の基本機能と連携し、データ入力レスな給与計算を支援する。
AIの活用については、既存機能へのAI組み込みによる業務の効率化・自動化に取り組む。具体的な機能として、「AI履歴書読み取り機能」がすでに提供されているほか、検索ボックスに質問を入力することで、文脈に合った回答が出力される「AIアシスタント機能」が25年中に提供開始予定。AIとタレントマネジメントを掛け合わせて人的資本経営への貢献も目指す方針で、現在、社内における人材の提案や社内ポジションの提示などのための「AIマッチング機能」や、組織課題の発見やノウハウの提供を行う「AI分析機能」の開発を検討している。
HR SaaS以外の領域については、情報システム部門向けの領域やBPO領域へのサービス拡大を進める。情シス領域に関しては、シングルサインオン機能である「IdP機能」を24年にリリースしたが、今回新たにSmartHR上で外部サービスアカウントを一覧で可視化し、アカウント追加や削除が可能な「ID管理」機能の提供を8月に予定する。
BPO領域では、テクバンと協業し、端末管理BPOサービスの検討を開始している。企業は従業員の入退社や異動、休職に伴う情報端末の管理を外部に依頼することができ、工数の削減につながるとした。芹澤CEOは、「情シス領域は多くの作業がソフトウェアで完結することがなく、実際の情報端末を取り扱うことが多い。私たちはSaaSが(事業の)主体となっており、単体の力ではなかなか効率化することができないので、テクバンなどと協業して統合的に情シス業務を効率化することを考えている」と説明した。
また、30年までには、SaaSとSaaS以外の領域を合わせて売上高1000億円を目指す。SaaS以外の事業としては、人事制度設計や制度の運用を支援する人事コンサル領域、給与計算ソフトの設定代行やインテグレーションを行う給与計算支援領域、情シス領域における支援を想定している。