NECは8月21日、倉庫などを移動するロボットの経路を最適化するAI活用技術を発表した。AIによって限られた時間の中で素早く経路を選定し、安全で効率的な自律走行を実現するとしている。2026年度中の実用化を目指す。
「二重のAI活用」が特徴。障害物がある経路について、まず「教師AI」がシミュレーションする。次に、複数の教師AIの経路予測データを一つのAIが学習する。学習済みの単一AIは実際に障害物をセンサーで検知すると、学習データから最適な経路を生成してロボットの動作を制御する。
ロボットに複数のAIを搭載する手法もあるが、障害物があるたびに複数のAIを切り替えると処理に時間がかかる上、計算負荷が重く、リアルタイムの制御が難しくなる。そこで複数の学習済みAIを取り込んだ単一AIのみにすることで、AI同士が切り替わる手間をなくし、処理速度と経路選定の質を担保する。
同社の社内実証では、新技術は複数のAI学習により15本の予測から経路を比較し、最適な経路を選択。AI予測が1通りだけの既存手法に比べて移動時間が半減したという。
宮野博義 所長
開発の背景について、NECビジュアルインテリジェンス研究所の宮野博義・所長は、労働力減少の解決や生産性向上に向けてロボット導入のニーズが高まる一方、「これまではロボットのために(通路の幅を確保するなど)環境をお膳立てする必要があった」と指摘。新技術の導入によってロボットのための環境整備が不要になり、障害物が多いようなロボットに不向きな現場でも、人手不足解消と生産性向上に貢献するとしている。
活用場面として物流倉庫や工場に加え、小売店の巡回ロボットも想定している。実際の販売に向けては26年度の事業化を目指して事業部門と協議している。
(春菜孝明)