米Snowflake(スノーフレイク)日本法人は12月9日、エンタープライズ向けデータエージェント「Snowflake Intelligence」の国内展開を開始した。同日の会見で浮田竜路社長は、専門知識がなくても、自然言語による指示で企業内のデータからインサイトを引き出すことができる使いやすさを強調。「自社データへのアクセスの民主化を進めていきたい」と展望した。
(南雲亮平)
Snowflake日本法人
浮田竜路 社長
Snowflake Intelligenceは、同社のクラウドデータプラットフォーム「AIデータクラウド」の追加機能として提供する。最大の特徴は、プラットフォーム上にLLM(大規模言語モデル)機能を組み込んでいる点だ。元々備わっているアクセス権限の設定やモニタリング、ログ管理といったガバナンスとセキュリティーを生かしながら、AIエージェントがデータを活用できる。同一基盤上で動作するため、他社のデータ基盤に接続するよりもデータへのアクセスは効率的となる。さらに、AI利用時のトークンコストのみで利用できる点が価格面における優位性となる。
構造化データと非構造化データを検索する精度とパフォーマンスも強みとして訴求する。浮田社長はAIに投入するデータを原油に例えた上で「ERPやCRM内の埋蔵量は非常に多い。最近では非構造化データへの注目も高い」と述べ、こうしたデータを活用できる仕組みの構築が、企業の意思決定や業務変革をさらに加速するとの見解を示した。
AIアプリケーションやエージェントの大規模な展開に向けては、現場の環境にあわせてカスタマイズできる選択肢と柔軟性も求められる。このニーズに応えるため、マルチエージェントソリューションの構築にも対応する。また、同社が運用するMCPサーバーを使えば、米Anthropic(アンソロピック)や米Salesforce(セールスフォース)などのAIエージェントを安全かつ簡単に接続可能で、アプリケーションの構造をシンプルにすることができる。
グローバルでは11月上旬に正式リリースされている。すでに1200以上のユーザーが活用しており、1万5000以上のAIエージェントを自社内で構築・展開しているという。日本でも6月にパブリックプレビューを開始し、フィードバックを集めていた。
レビューに参加したコクヨは、ビジネスサプライ流通事業でのデータ活用推進を目標として導入。約2カ月間で概念実証(PoC)を実施し、ビジネス全体の売り上げや仕入れの進捗確認、イベント発生時の影響度の深い分析といったことができるAIエージェントを開発した。
コクヨ
夛名賀 寛氏
導入メリットとしては、データ活用へのエントリーポイントになり得る点を挙げた。コクヨのビジネスサプライ事業本部ビジネスサプライ事業戦略室データドリブン推進ユニットの夛名賀寛氏は、「AIが『一緒にこういうデータを分析してみませんか』と問いかけるので、データ活用のステップをAIと一緒に上がることができる」と説明。これまでBIツールの利用頻度が高くなかったマネージャー層も積極的に使い始めるほど「データ活用という体験が変わった」という。